【医学古今】
上等の医者は国を治す
医者を評価する基準は時代とともに変わっています。今では病気を治せば素晴らしい医者だと言われますが、昔はより高い基準があったようです。
唐代の名医、孫思邈の著書『千金方』巻一「診候」には「上医医国、中医医人、下医医病」という一文が記されています。これは、「上等の医者は国を治す能力があり、中等の医者は人を治すことができ、下等の医者は病気しか治せない」という意味になります。
国を治す医者とは、どういう意味でしょうか?
中国の伝統医学は陰陽と五行の理論を基礎とした医学体系です。陰陽の理論では、道家のいう宇宙の万事万物がすべて陰陽の原理に従って生成、変化、消滅します。五行の理論は、中国古代の物理学で、万物が金、木、水、火、土の五種類の元素から構成され、その相互間の相生、相剋、相乗、相侮により変化します。
故に陰陽と五行の理論から、宇宙の万事万物の変化を認識でき、国家の政治、生命現象、病気の原理も認識できます。したがって、医者でありながら、国の「病気」を治すことも理解できます。
このような上等の医者になるためには、医薬の知識に精通する以外に、天文、地理、歴史、四書五経、養生、修煉、算数、占いなどの知識も必要となるのです。
(漢方医師・甄 立学)
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