中国製の新型コロナウイルスワクチン(Photo by Kevin Frayer/Getty Images)

IOC、日本未承認の中国ワクチン提供発言で波紋 自民議員「未接種と同じ」

東京オリンピックの開催を今年7月に控えるなか、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は11日、大会出場選手に中国製ワクチンを提供すると発言し、大きな波紋が広がった。開催国の日本にも事前の通知はなかったという。中国製ワクチンをめぐっては、過度な副作用や低い有効性が疑問視されており、日本では未承認となっている。

「勝手に」決められたワクチン接種

IOCからの突然の中国ワクチン提供について、片山さつき参議院議員は3月11日、「開催国は日本です。中国製のワクチンの性能を日本政府はいつ認めたのでしょうか?」とツイートした。

IOC会長のバッハ氏によれば、新型コロナウイルスの中国製ワクチンは、中国オリンピック委員会から提供の申し出があったという。そして、中国側によるワクチン提供は「東京五輪の安全性を確保するための新たなマイルストーン」であると述べた。そして、五輪参加選手のためのワクチン費用はIOCが負担するとした。

丸川珠代五輪担当大臣はバッハ氏の発言を受け、12日の閣議後の記者会見で、中国製ワクチンの提供について事前に伺っておらず、調整もなかったと発言した。そのうえで、「大会の参加にワクチン接種を前提としないという前提は変わらない」と強調した。

中国製ワクチンは、日本では承認されていない。片山議員は「中国製ワクチンは第3相の治験を終えていない、日本では中国製ワクチンの治験をやる予定はない。従って現時点では、このワクチンを接種済みになった海外選手に対する水際判断は『未接種者と同じ』になります」とツイートした。

日本で現在承認を受けているのは、米ファイザー社製のワクチンのほか、米モデルナと英アストラゼネカの2製品だけだ。

日本国内のワクチン接種は、第一線で患者と接する医療従事者が最初の対象となっており、順次に高齢者、基礎疾患のある人へと拡大していく。16歳以上の一般人への接種が始まる時期は決まっておらず、五輪に参加する選手に対する優先的な接種も発表されていない。

いっぽう、IOCによる中国ワクチン接種が批判にさらされると、バッハ会長は責任回避ともとれる物言いになった。12日、バッハ会長は「ワクチンが製造された国がどこかは関係ない。重要なのは、効果があるのか、副作用が出ないのかということだけだ」と述べた。

バッハ氏はIOC会長選で他の候補者はなく、10日、オンラインの総会で再選が決まった。信任投票では有効投票94のうち賛成93票、反対1票だった。2期目の任期は、東京オリピック閉幕翌日の8月9日から2022年北京冬季五輪を含め2025年までの4年だ。

中国製ワクチンは「世界で最も安全ではない」効果にも疑問

世界各国にワクチンを供給し、「ワクチン外交」を進める中国だが、肝心のワクチンの効果が疑問視されている。

元米陸軍研究所ウイルス学研究員の林暁旭博士は、中国当局のデータの信ぴょう性に疑問を投げかける。「79.34%という数字はどのように出したのか。ワクチン対照群か、それとも接種したワクチンか、接種した人の何人が感染したのか」と疑問を並べ、ワクチンの有効率は同社発表と異なる可能性があると大紀元の取材に述べた。また、中国当局の承認基準は国際基準よりも低く、最もよく使われる中国製のインフルエンザワクチンの効果も50〜70%だと指摘した。いっぽう、ファイザー社やモデルナ社製のワクチンの有効性は約95%とされている。

また、中国製ワクチンの副作用も懸念材料の一つだ。中国ワクチン専門家の陶黎納氏は自身のSNSアカウントに、国薬中生北京のワクチン「衆愛可維」の説明書電子版を掲載した。説明によれば、副作用として、局所的あるいは全身で計73種類あるとされる。接種部位の痛みや頭痛に加えて、発熱、高血圧、下痢、視力低下、味覚障害、尿失禁、紅斑などが引き起こされる可能性があり、陶氏は「世界で最も安全ではないワクチン」と表現した。

IOCと中国の強い「絆」

ウイグル人に対するジェノサイド政策や香港における民主化運動弾圧といった中国共産党政権による人権侵害が続いているため、各国の人権団体は、平和の推進という五輪憲章に反するとして、北京で開催される冬季五輪のボイコットを呼びかけている。

3月12日、北京冬季五輪の開催に反対する人権活動家はオンラインで記者会見を開催し、人権弾圧が現に行われている中国でオリンピックを開催すべきではないと訴えた。

同日、IOCのバッハ会長はこれに反論し、旧ソ連のアフガン侵攻に起因したモスクワ五輪ボイコットを例に挙げて、北京五輪のボイコットは「アスリートに害を及ぼすだけ」と発言した。そして「IOCは世界政府ではない。安保理やG7会議で解決できないような問題をIOCは解決できない」と述べた。

IOCと中国企業の提携も注目に値する。IOCは2017年、中国の大手EC企業アリババグループと28年までの契約を結んだ。また、2019年には1業種1社が原則とされるIOC最高位のスポンサー制度「TOPプログラム」のスポンサーとして、中国の大手乳製品会社「蒙牛乳業」と32年までの長期契約を締結した。

(王文亮)

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