米トランプ政権 犯罪組織「三合会」リーダーに制裁 一帯一路や違法カジノで東南アジアに浸透
米トランプ政権はこのほど、中国人民政治協商会議のメンバーで、在外華人の犯罪組織・三合会(トライアド、14K Triad)の組織犯罪リーダーである尹国駒(Wan Kuok Koi)に制裁を科した。
米政府7月の調査報告書によると、尹国駒は、中国共産党「一帯一路」政策を、東南アジアにおける越境犯罪ネットワークの隠れ蓑として利用していた。尹はパラオやミャンマーなどで違法カジノを運営し、ここには中国の国有企業が多数関与している。
米財務省は2020年12月9日、グローバル・マグニツキー人権法に基づき人権侵害者や国際汚職犯罪者に制裁を科す大統領令13818号(2017年署名)の制裁対象リストに、尹国駒を含む3人の個人を追加した。対象者の米国資産のみならず、取引した外国人も含むすべての関係資産が凍結される。
同省によると、尹が率いる三合会は中国共産党系の最大級の組織犯罪集団で、麻薬密売、違法賭博など、様々な犯罪活動に従事している。また、今回の制裁は、尹国駒が管理する3団体のカンボジアの世界洪門歴史文化協会、香港の東美グループ、パラオの中国洪門文化協会にも適用される。
その容姿から「歯欠けの駒(Broken Tooth)」の異名を持つ尹国駒は、香港やマカオでは有名な犯罪組織・三合会のリーダーである。1999年に高利貸し、マネーロンダリング、武器所持などの罪でマカオの裁判所より13年10カ月の実刑判決を言い渡された。2012年12月に出所した。
尹は出所後、マカオではなくラオスやミャンマー、カンボジア、パラオにおける活動を活発化させた。2018年の世界洪門歴史文化協会発足時、組織の役割について「外国人と在外華人に中国語の本を学ばせ、忠誠心、親孝行、慈悲、正義について学習させる」と語っていた。
米財務省は、制裁発表に合わせた声明のなかで、「一帯一路プロジェクトの背後にいる中国企業には共通点がある。彼らの経営陣は、中国だけでなく東南アジアの他の地域での犯罪ネットワークや違法行為に関与する関係者とつながっている」と書いている。
尹国駒の東美グループは近年、中国投資が急増するカンボジア南部沿岸都市のシアヌークビルで、20平方キロメートルものカジノを開発している。2月、尹は180億ドルもの契約となる調印式に出席し、シアヌークビルは「東南アジアの深圳」になると豪語した。
米国平和研究所(USIP)は2020年7月、「ミャンマーのカジノ都市、中国の役割と越境犯罪ネットワーク」と題する報告書を発表した。中国共産党がどのように三合会を通じてミャンマーに浸透しているか、中国国有企業がどのように関わっているかを説明している。
USIPの報告によれば、ミャンマーのカレン州で進行中のプロジェクト3件には、違法賭博やマネーロンダリング、暗号通貨の操作に関わる中国企業が管理している。建設予定の土地面積は合計157平方キロに上る。広報によれば、これらの企業は中国共産党が率いる広域経済圏構想「一帯一路」の下で活動しており、中国政府とのつながりがある。一帯一路は、中国建国100年を迎える2049年までに、中国共産党中心のグローバル貿易ネットワークを構築するための大規模インフラ開発計画だと考えられている。
取り締まり強化により 逃げ場となるミャンマーのカレン
近年、カンボジアやフィリピン、ミャンマーなど東南アジア諸国で、違法なオンライン賭博業を始める中国人が増えている。中国共産党はオンライン賭博を通じて、各国に浸透工作を行なっている。
特に人気の開業先として、ミャンマーのカレンに賭博、カジノの拠点が形成されている。フィリピンやカンボジアの当局が、オンライン賭博の取り締まりを強化したためだ。さらに、ミャンマーのカジノの多くは、民間武装勢力が統制する区域にあり、こうした地域は独自のルールが横行し違法な行為がまかり通っている。
大紀元時事解説者の李林一氏によれば、中国共産党と関わる三合会のような闇の犯罪組織も、地域を通じてミャンマーに堂々と入国している。
中国共産党はミャンマーに対して、「一帯一路」を通じた表のルートと、現地カジノを運営する武装勢力を支える中国共産党に近い尹国駒らの裏のルートを持っている。李林一氏は、中国共産党はミャンマーを乗っ取るために表や裏から工作していると指摘した。
ミャンマーは中国共産党の一帯一路参加国であり、中国とミャンマーは2018年に「中国・ミャンマー経済回廊(CMEC)」協定を締結した。
大紀元は以前、リークされた資料から、中国人民解放軍がミャンマーに秘密裏に拠点を設けて地域への浸透と潜入を容易にしていると独占報道した。
東南アジアに広がる違法カジノ 中共の浸透工作
三合会と違法カジノの事案は、尹国駒の件に限らない。2019年、オーストラリア当局は三合会の元メンバーで、カジノ関連業大手サンシティ・グループ創業者で最高経営責任者(CEO)のアルビン・チャウ氏に対して入国禁止措置を発表した。チャウ氏は、中国共産党の中央統一戦線部と繋がる中華海外聯誼會のメンバーでもある。
この措置が取られる前、豪メディア「60ミニッツ」によれば、豪警察は香港から受けとった機密資料として、チャウ氏が「大規模なマネーロンダリング活動」関与の疑惑があると伝えている。
サンシティは現在、世界最大のジャンケットオペレーター(訳注:カジノにVIP顧客を紹介する仲介業)だ。ジャンケットは、三合会が支配する分野として知られる。数十億規模のサンシティはカジノ関連業のほかに不動産、エンターテインメントビジネスを展開する複合企業。
カジノ情報を伝えるCasino.orgの2016年の調査によると、カジノ分野における三合会の影響力は広範囲に及ぶと結論づけた。これは、元三合会メンバー、ジャンケットオペレーター、中国政府当局者、警察からのインタビューに基づいている。しかし、従来のように暗躍するよりも、より「文明的」で日に当たるビジネスを行うようになっているとした。
こうした動きを証明するかのように、三合会のチャウ氏が率いるサンシティは、カジノのほかに、東南アジアやロシアでリゾート事業を展開している。ベトナムでは、2020年後半にオープンした40億ドルの統合型リゾート「ホイアナ」や、ウラジオストク近郊のロシア初の統合型リゾート「ティグレ・デ・クリスタル」の支配権を所有している。
また、同社はエンターテインメント分野にも進出しており、子会社のサン・エンターテインメント・カルチャーで音楽や映画を制作している。
いっぽう、チャウ氏は中国国営メディアから槍玉にあげられたことがある。数十億ドル規模のオンラインゲーム事業をカンボジアとフィリピンで運営しており、賭博を固く禁じられた中国本土のユーザーにサービスを広めていたことが報道された。チャウ氏は、マカオ政府への謝罪を表明している。
(翻訳編集・佐渡道世)