中国「隠れ」漁船 信号消して違法操業 日本や台湾、韓国EEZで
中国の違法漁船団は、国際的な禁止や条約を無視して、日本や台湾、韓国の海域でイカを乱獲している。監視機関によると、中国側の数百万ドル相当の乱獲により、イカの数が激減したという。
米科学誌「サイエンス・アドバンシス」に7月下旬に掲載された、グローバル・フィッシング・ウォッチ(Global Fishing Watch)の調査報告は、日本、ロシア、韓国と北朝鮮海域に現れる中国の「隠れ」漁船の追跡データに基づいている。
報告は、同グループが2017年に900隻以上の漁船を、2018年に700隻以上を追跡した結果をまとめた。それによると、中国漁船の年間イカ漁獲量は16万トンを超え、漁獲高は約4億4000万米ドルにのぼる。
「中国の隠れ漁船はいずれも公的な信号を発信しておらず、通常の監視システムでは探知できない。国際的な漁業管理の抜け穴の中で操業している」とグローバル・フィッシング・ウォッチの地域コーディネーターを務めるホキ・ロー氏は、ラジオ・フリー・アジア(RFA)に語った。
このため、グローバル・フィッシング・ウォッチは、自動船舶識別システムや衛星遠隔測定など4種の衛星技術を使って、これらの漁船を追跡した。魚やイカを引き寄せるために使われる光量の大きいライトも、漁船を特定するのに役立つという。
各国の漁業当局や国際漁業管理機関によると、中国のイカ釣り漁船数千隻は毎年、他国の沿岸に向かって航行している。国際的なルールを無視して、夜中に北朝鮮の沖に中国の船団が集まり、真っ暗な海にライトを当ててイカを獲っている。
「2019年には、北朝鮮の海域で800隻近くの中国漁船が違法操業を行っていた」と、ロー氏は指摘する。
韓国海洋水産部は10月5日、2019年には中国漁船6543隻を海洋警察が追い払ったと発表した。同庁によれば、今月に入ってから中国漁船約360隻が毎日、韓国の排他的経済水域 (EEZ) に入域しており、9月と比べて80%も増えたという。
中国は、約2600隻の遠洋漁船と600隻のイカ漁船からなる世界最大の遠洋漁業船団を有する。これらの漁船は、繁殖までのサイクルが完了する前にイカを網で捕獲するため、イカの個体数を激減させている。
イカの激減はまた、小型魚やエビなどイカを餌とする海洋生物にまで影響し、海洋生態に悪影響を及ぼす可能性がある。
2017年の北朝鮮の核実験に同調し、中国の艦船は国連安全保障理事会の禁止令に逆らって操業を続けたという。
中国と北朝鮮の当局者は、グローバル・フィッシング・ウォッチの報告について回答していない。
「私たちは、各国政府による漁業管理の強化を支援することに喜ばしく思う」とロー氏は付け加えた。
日本海に到着した北朝鮮の難破船 中国隠れ漁船に追い出されて漂流
イカは回遊性が高く、国境を越えることがある。日本の漁業者は2018年以来、人口が激減する中で漁獲量が新たな低水準に達した。2003年以降、イカの個体数は著しく減少し、日本と韓国のイカの漁獲量は80%減少した。
中国漁船は領海侵犯してイカ漁業に出かけるため、北朝鮮の船もまた追い出され、ロシアや日本の領海に侵入している。
「2018年には約3000隻の北朝鮮漁船がロシア領海内で違法操業していた」とロー氏は指摘する。「北朝鮮の漁船は通常、木造船であり、一般的な商業漁船よりもはるかに暗い照明を使用している」ため、中国漁船との区別がつくという。
米NBCは7月、数カ月にわたり日本海を漂流していた北朝鮮からの漂流船は、中国の隠れ漁船によって旧来の漁場から強引に追い出された漁業者ではないかと報じた。
南太平洋における懸念
チリ、ペルー、ガラパゴス沖を管理する南太平洋地域漁業管理機関 (SPRFMO) にとっても、中国隠れ漁船による大規模なイカ釣り漁が懸念されている。メンバーには米国、オーストラリア、EU、中国、ニュージーランド、ロシアなどが含まれる。
SPRFMOによると、2019年には南太平洋で516隻の中国遠洋漁船が操業していることが報告された。中国の船の数は2010年以来、4倍になったという。
さらに、世界のイカの漁獲量の50〜70%が公海上で中国漁船団に捕獲されており、漁業紛争や政治的緊張を引き起こしている。
グローバル・フィッシング・ウォッチの最新の衛星データ分析によると、2020年はじめ、300隻以上の中国漁船がエクアドル沖のガラパゴス諸島の海域に集まった。
エクアドル軍は、監視を避けるために中国漁船が追跡システムを断続的にオフにしていると非難した。
2019年には、アルゼンチンの海軍巡洋艦が同国排他的経済水域に入ったとして、中国漁船に発砲した。
グローバル・フィッシング・ウォッチは、すべての漁船を対象とした国際的な追跡システムと、各国政府が合意する国際的な規制制度を設ける必要があるとしている。
(翻訳編集・佐渡道世)