インド、潜水艦1隻をミャンマーに引き渡し 中国に対抗する海軍能力を強化
インドは10月、ミャンマーに両国の軍事協力に基づき潜水艦1隻を引き渡した。戦略アナリストは、インドは東南アジアと関係強化を図り、中国共産党の影響力の高まりに対抗していると見ている。
インド外務省のアヌラグ・スリバスタバ(Anurag Srivastava)報道官は、潜水艦の引き渡しについて「海事協力はミャンマーとの多様な関係強化の一環」と述べた。
この潜水艦はロシアのキロ級潜水艦(Kilo class submarine)で、排水量3000トンのディーゼル攻撃潜水艦。1988年にインド海軍に投入された。引き渡し前にインド国営のヒンドゥスタン造船所が改造した。最大航速18ノットで、水深300メートルまで操作できる同艦艇は、ミャンマー初の潜水艦となる。
この攻撃潜水艦は、もともとはインド海軍が使用していたシンドゥビル号(S58)だ。引き渡し後に、ミヤ・デンカドゥー号(UMS Minye Theinkhathu)というミャンマーの歴史的英雄の名前に改名した。10月15日には、ミャンマー海軍艦隊の演習にも参加した。
インドの主要メディア、ヒンドゥスタン・タイムズ(Hindustan Times)によると、匿名希望の消息筋は、「キロ級潜水艦は旧型設計だが、ミャンマーに引き渡される前に大幅な改造と改良が施された」という。
さらに同氏は、「インドがこの時期に潜水艦を引き渡すことに意義がある。中国海軍の活動が増えたことで、地域海域を監視するためにこの艦艇が必要になった」と付け加えた。
別の情報筋は「ミャンマーには『中国の機械、すぐ壊れる(tayokeset tayet-soke)』という言葉がよく使われる。ミャンマー軍部指導部は中国が提供する装備の品質に不満を抱いており、すでに輸入の多角化を始めており、インドに目を向けている」と語った。
10月4~5日にかけて、インドのナラバネ陸軍参謀総長(Manoj Mukund Naravane)と外務省アンゲラ・シーガル副大臣(Harsh Vardhan Shringla)がミャンマーを訪問し、アウンサンスーチー国務顧問(Aung San Suu Kyi)とミンアウン軍総司令官(Min Aung Hlaing)などと会談した。
訪問期間中、両国は「COVID-19ワクチンの共同生産、2021年前半のSittwe港の操業開始、職業訓練プログラムの実施の可能性」について話し合ったと述べた。
さらに、両国間の防衛および安全保障協力を強化するため、他国の安全保障上の利益に対する自国領域の使用を認めないことに合意した。これは、インドが中国によるミャンマーのインフラ投資の増加を懸念し、とった対抗策であるとみられている。
中国政府は、ミャンマーと国境を接する雲南省で、道路と鉄道で結ぶ深水港の建設に取り組んでいる。インドはこの接近を強く警戒している。
ミャンマーは、東南アジアでインドに国境を接する唯一の国家。接する国境は約1600キロメートルに渡り、ベンガル湾では725キロメートルの海上国境を共有している。
インド当局は、中国海軍に対抗するために海上の防衛・防衛パートナー強化にますます注力していると、インド戦略研究所(IDSA)研究員シャムシャド・アフマド・カーン氏は、日経アジアレビューの取材で語った。
ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、インドのジンダールにある全世界大学(OP Jindal Global University)国防・安全研究のプラカシ・ジャハ教授(Prakash Jha)は、「ミャンマーは軍事的にも経済的にも中国への依存を減らしたい」と述べた。
「インドは以前、海軍偵察機や通信機器など装備品を提供した。しかし、彼らは最近、もっと進んだ装備を探している」とし、潜水艦の供給は、インドがミャンマーとの協力関係をより深めていく意思の現れだとジャハ氏は語った。
近年、バングラデシュやベトナムなども、海軍の近代化に向けて水面下でインドと作戦能力の強化を続けているという。
(翻訳編集・佐渡道世)