中国当局は9月22日、習近平当局を批判した元実業家の任志強氏に対して、収賄罪などの有罪判決を言い渡した(大紀元資料室)

習主席批判の任志強氏に18年の懲役 政治犯よりも重い判決が「紅二代への見せしめ」との見方

中国の北京市第2中級人民法院は9月22日、汚職罪、収賄罪、横領罪と国有企業職員の職権乱用の罪で起訴された国有大手不動産会社「華遠集団」の元会長、任志強氏に対して懲役18年、罰金420万元(約6502万円)の実刑判決を言い渡した。任氏は今年3月、習近平当局の中共ウイルス(新型コロナウイルス)をめぐる対応を非難した。当局は、任氏への刑罰を通して、党内の反習近平勢力への見せしめにする狙いがあるとみられる。

中国当局が、紅二代(毛沢東らと共産革命に参加した長老らの子弟)である任氏に対して懲役18年の有罪判決を下したことに関して、国内外で大きな波紋を広げている。米ラジオ・フリー・アジア(RFA)中国語22日付は、「今年69歳の任氏が刑期を終了し出所する際、87歳になる。同氏にとって、18年の懲役刑は無期懲役であるに違いない」とした。

四川省に住むジャーナリストの李麗氏はRFAに対して、「これは、当局が任氏に対して刑務所の中で死ねと言ったのと同じだ」と話した。

また、RFAは、懲役18年という判決は、他の政治犯に言い渡された刑期より長いと指摘した。中国の民主化を訴える「08憲章」を起草し、2010年にノーベル平和賞を受賞した中国人作家、劉暁波氏は同年、「国家政権転覆罪」の有罪判決を下され、懲役11年を言い渡された。また、中国の人権問題に関するウェブサイト「六四天網」の創立者である黄琦氏は、16年に逮捕され、19年に「国家秘密故意漏えい罪」などの罪に問われ、懲役12年の実刑判決を受けた。「明らかに任氏への判決は、劉氏と黄氏の判決と比べて重い」

一方、1989年中国当局が学生らの民主化運動を武力鎮圧した「天安門事件」の当時、学生リーダーであった王丹氏は、ツイッターにコメントを書き込み、任氏の刑は自身が受けた「(反革命宣伝扇動罪で)懲役4年」よりはるかに重いとした。

「これは、中国共産党は身内の人に、より厳しい仕打ちを与えるということだ」と王丹氏は分析した。

見せしめ

香港の中国時事評論家、林和立氏はRFAの取材に対して、任氏が重い刑を受けたのは「党内の反習勢力への見せしめ」で、「身内である紅二代でさえ、免れない」とした。

林氏は、習近平氏は今後、党内にいる自身の政策に反対し批判を展開する人らに対して、さらに言論統制を強めていく姿勢だとの見方を示した。

中央党校の元教授である蔡霞氏は9月10日、米ボイス・オフ・アメリカ(VOA)の取材に応じた際、紅二代の間で、中国共産党体制について考え直し、反省している人が「多くいる」と話した。

「北京にいる紅二代の多くは文化大革命、林彪事件などを経験した。ある日、親が突然粛清の対象になり、自身も連座され、特権階級から農村部に下放された。実に、皆はここから、体制についての反省を始めたのだ」と蔡氏は語った。

任志強氏は今年3月、中国当局が中共ウイルスの感染情報を隠ぺいし、大流行を招いたと批判し、習近平氏について「裸になっても皇帝になりたがる道化師」と暗に風刺した。その後、一時消息不明となった。7月、中国共産党は「党の基本原則に反した」として、任氏の党籍をはく奪すると発表し、経済犯罪の容疑で起訴すると明らかにした。

任氏は、習近平氏の盟友で、習政権1期目の反腐敗キャンペーンで指揮を執った王岐山・国家副主席とも親しい間柄で知られている。同氏は過去にも、習近平当局に対して痛烈に批判を行ったことがあり、「任大砲」と呼ばれた。

2016年2月19日、習近平氏が国営中央テレビ放送(CCTV)を視察した際、CCTVは「CCTVの姓は『党』です。党に絶対的な忠誠を誓います。ぜひ観閲してください」と書かれた横断幕を掲げて、習氏を歓迎した。同日、習近平氏は、共産党機関紙・人民日報、国営新華社通信を視察した際、「党のメディアの姓は『党』でなければならず、政治に奉仕しなければならない」と述べた。

この発言について、任志強氏は中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」に投稿し、「メディアはいつから党のものとなったのか。メディアが人民の利益を代表しないなら、人民によって捨てられるのだ」と糾弾した。これを受けて、官製メディアは「国民の代弁者と標榜して、一般市民に反党・反政府の感情を煽った」「誰が彼に反党の勇気を与えたのか調べるべきだ」「国家政権転覆罪と国家政権転覆扇動罪を犯した」などと一斉に任氏への集中攻撃を始めた。

報道規制

北京市の地裁が22日に判決を発表した後、人民日報海外版、北京日報などの官製メディアは、微博上で、地裁の発表だけを引用して報道した。また、微博を含む中国国内のSNSでは、当局のネット検閲強化で、同報道に関するユーザーのコメント投稿ができなくなっている。

林和立氏は、官製メディアが任氏の判決を大きく取り上げていない理由について「任氏に対する世論の同情を呼び起こしたくないことにある」と分析した。

任氏は実業家として「不動産王」とも呼ばれていた。中国の政治学者の呉強氏はRFAに対して、習当局が体制批判をした任氏に、経済犯罪の容疑で追及したことに関して、「国内すべての実業家が警戒しなければならない」と語った。

「中国にいる企業家が誰であれ、政治的な批判を行えば、任氏のように重い刑罰を受ける可能性がある」

「習近平氏は、2年後の党大会に向けて、自らの絶対的な権威を確立しようとしている。習氏は、任氏への刑罰を通じて、党内および国内の反対・批判の声を一掃しようと狙っている」

VOAによると、今年3月、任志強氏の息子と秘書も当局によって拘束された。

(翻訳編集・張哲)

関連記事
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]