【紀元曙光】2020年8月25日

(前稿より続く)15年ほど前に読んだ本を、久しぶりに机上に置いて再読している。

▼ラルフ・タウンゼント『暗黒大陸 中国の真実』(芙蓉書房出版)。興味深い本である。米国で出版されたのは1933年11月。著者が米国の外交官として1931年12月から1933年3月まで滞在した中国での、主に上海と福建における見聞をもとに書かれたノンフィクション本である。

▼つまりは「中共以前の中国」が描かれている本で、当時を知る歴史資料としてそれなりの価値はあるが、「中国と中国人が嫌いなアメリカ人」の視点から描かれたものであることは留意しておきたい。つまり元祖「嫌中本」なのである。

▼著者のタウンゼントが外交官の一員として中国に滞在したのは、実質2年3か月ほどである。彼に勉強の意志があったとしても、長大な歴史を擁する東洋の大国に身をおいて、その文化を欧米人が深く理解するには、この時間ではあまりに短い。また、彼自身が現地の言葉を解せたわけではないので、その間には主として中国人の通訳が入るのだが、この通訳もふくめて、自分が使用する中国人に対しては、終始靄(もや)のかかったような感情を捨てられなかった。

▼事実、彼が使用する中国人の使用人は、家の地下室にある燃料などを日常的に盗み取っていた。現行犯で盗みが明らかなのに、使用人は「旦那様の燃料が少なくなっていたので、今、私の分を持ってきて足していたところです。旦那様のご恩を思えば、何でもないことです」と見え透いた嘘をつく。

▼約90年前のことだが、「今もありそうだな」と小欄の筆者は思う。(次稿に続く)

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