米証券当局、中国版ネットフリックス「愛奇芸」を調査
米ウォール街に上場している中国企業「愛奇芸、iQIYI(アイチーイー)」は、財務データを改ざんした容疑で、米証券取引委員会(SEC)が調査を行っているという。調査会社は今春に指摘したが、最近、米メディアが報道したことで注目を集めている。
愛奇芸は中国IT大手・百度(バイドゥ)参加の映画配信サービス企業で、「中国版 Netflix」と例えられている。しかし、米ナスダックに上場している愛奇芸の株は、証券取引委員会の調査に関する報道以降、10ポイント以上も落ちた。
愛奇芸に対するデータ改ざん疑惑は4月、米国の投資会社ウルフパック・リサーチ(Wolfpack Research)が37ページに及ぶ報告「アイチーイー、中国版ネットフリックスか、あるいは単なる第二のラッキンコーヒーか(原語 iQiyi: China’s Netflix or Just Another Luckin Coffee?)」で指摘したことから始まった。
ラッキンコーヒーの粉飾決済問題は、中国上場企業による不正会計の代名詞になりうるようなインパクトを与えた。証券取引委員会は4月、中国の別の会社でナスダック上場企業・瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー、Luckin Coffee)」の財務調査を開始した。この会社は7月1日に委員会に提出した会社申告書で、不正会計により最大3億ドルの収益を水増ししたことを認めた。同社の株は急落し、取引は停止となっている。
ウルフパックの報告によると、愛奇芸は2018年のIPO(上場する前に株を手に入れて上場日に売るという作業)前から不正行為を行い続けていた。同社の2019年の売上をおよそ27%から最大44%程度を水増しし、ユーザー数も42~60%ほど誇張していたと主張した。
報告書は、愛奇芸が監査人や投資家に不正を隠すため、コンテンツや他の資産に支払った価格、買収額も水増ししていたと指摘した。
愛奇芸は不正会計疑惑を否定している。また、米国証券取引委員会から財務・営業記録の提出を求められていることを認め、調査には協力していると、8月13日に発表した第2四半期の業績に関する声明に書いている。
ウルフパックが2015年以降に入手した愛奇芸の中国信用報告書と目論見書の比較では、愛奇芸が証券取引委員会に提出した2015年、2016年、2017年の繰延収益は、それぞれ261.7%、165.5%、86.2%も水増ししているという。「愛奇芸は既存の不正行為を補うために、IPO後にさらなる水増しをして業績を発表する必要があったのではないか」とウルフパックの報告は指摘している。
2020年6月30日時点で、愛奇芸は、合計13億ドル相当の現金、現金同等物、制限付き現金、短期投資を保有している。また、今年の第3四半期の総収入は9億8410万ドルから10億ドルと見込まれ、前年同期比6%減から横ばいになると予想されている。
米上院は5月、ウォール街の中国企業への監視を強化する法案を可決し、中国企業が米国の市場規制ルールに従わない場合、強制的に上場廃止に直面すると警告した。
トランプ米政権が中国企業の米国金融市場への進出を阻止する動きは、データ、国家安全保障、金融、メディアに関わる中国企業を中心に冷ややかな影響を与えていると、米メディアCNBCの北京記者は報じている。
いっぽう、北京当局はこうした米側の市場調査に非協力的だ。3月に導入された中国の改正証券法では、中国人が国務院の証券規制当局の承認を得ずに証券関連書類を海外の規制当局に提供することを禁止している。
ナスダックの8月の米国上場カレンダーによると、中国企業の中には米国での上場申請を取り下げた企業もある。米国WeWorkに似た、アリババ参加のコワーキングスぺース最大手・優客工場(Ucommune)は2019年末、ニューヨーク証券取引所に上場を申請したが、今年8月に米国での上場申請を撤回するとの目論見書を提出した。
ムニューシン米財務長官は8月初め、米国株式市場に上場しているどの国の企業も、同じ財務監査要件を満たさなければ、2021年末以降に米国市場から追い出すと明言した。
(翻訳編集・佐渡道世)