中国政府企業、カナダ政府の保安検査設備を落札 調査へ
中国国有企業、同方威視(Nuctech、ニュークテック)社がカナダ政府のセキュリティ設備の入札に参加し、最低額ではないにも関わらず落札したことを受け、同政府は現在、落札の経緯について調査を進めている。
ニュークテック社は中国共産党の胡錦濤前総書記の息子によって設立された企業で、中国最大の保安検査機器メーカーでもある。
カナダ「ナショナル・ポスト」紙の8月12日付の記事によると、「7月、最低額を提示したニュークテック社が落札した」と報じられていたが、それが事実でないことが判明したという。
カナダのニュースサイト「グローバルニュース」7月15日の報道によると、「同社はカナダ政府から総額680万ドル (約7億円)の契約を受注した」という。同社が獲得した主要契約の内容には、X線スキャン装置、配送、設置、オペレーターのトレーニング、ソフトウエアなどが含まれ、世界中の170のカナダ大使館、領事館、上級雇用機関にセキュリティ設備を提供するものである。
カルガリーに本社があるセキュリティ企業KPrime Technologiesは540万ドルを提示していた。
ニュークテック社は以前にも規則違反していた
2014年、台湾桃園国際空港で使用されるX線検査装置の調達を担当していた台湾内務省・航警局の元職員、孫一鳴はニュークテック社の女性マネージャーにハニートラップを掛けられ、賄賂を受け取った上、低品質な装置を購入した。
同装置は受け入れ時に欠陥が発見され、分解後、元々日本製と表示されていた文字の中に中国で使われている「簡体字」の文字が混ざっており、しかも型番なども製造元のウェブページで確認できる事が判明した。
これは明らかに「中国製品が入札に参加できないという規則」に違反しているものであり、これらのX線装置の品質上の問題により、セキュリティ担当者による判断に誤りが生じる可能性があった。
そして同年5月、「X線検査の監視の目をかいくぐり、スーツケースに隠れた生きた猫」事件が発生し、飛行機の荷物室にいた猫を発見したのは、韓国着陸後だという。
調査の結果、「孫が在職中に、ニュークテック社のX線装置が調達規定に適合していないことを知りながら、同装置を日本に送り、日本製にした」ことが判明した。
航警局は、桃園空港の第一・第二ターミナルに設置されていた同社の低品質なX線装置14台とX線撮影車3台を購入し、2億5千万円以上を支払った。孫が、この取引で約1100万円のキックバックを受けていたことも明らかになり、桃園地裁は2016年7月26日、孫を反汚職犯罪法違反容疑で起訴し、のちに17年6カ月の実刑判決を言い渡した。
無視できない国家の安全保障
ニュークテック社は前述の680万ドルの契約に加え、2017年以降、カナダ国境サービス庁(CBSA)にスキャン機器および実験設備を提供するという総額650万ドルの契約も獲得している。
カナダKPrime Technologies社CEO、Kham Lin氏は、「倫理的な配慮はさておき、セキュリティのようなデリケートなプロジェクトで、中国の国営企業に招待状を出すことは、愚かだ。ニュークテック社の設備を使えば、世界中のカナダ大使館や領事館が浸透されない保証はどこにもない」と述べた。
監視活動強化のため、中国当局は2017年、政府が「国家安全保障」の名の下で、企業に情報提供を求める権限を与える新しい法律を実施した。これを受け、中国当局管理下にあるテクノロジー企業が国家安全保障上の脅威となることへの国際的な懸念が高まっている。
空港セキュリティ業界の「ファーウェイ」として知られているニュークテック社は、これまでに160の国と地域の空港と税関当局にX線装置、スキャナー、爆発物検知システムを提供してきた。
匿名を条件に話したセキュリティ業界の関係者によると、「X線装置は独立したシステムであり、大使館ネットワークには接続されない」と述べた。同氏の懸念は、「配送、設置、オペレーターのトレーニング、ソフトウエアなど、将来的にどの大使館にも大量な中国の技術があること」だという。
Kham Lin氏は「ニュークテック社が技術スタッフを派遣してこれらの設備をメンテナンスなどする際、機械の中に何でも入れることができる、特別な検査をでもしない限り、見つけ出すことは困難だろう」との懸念を示した。
カナダの国際貿易大臣フランソワフィリップ・シャンパーニュ氏は同国メディアに対して、ニュークテック社について調査をしていると述べた。
(大紀元日本ウェブ編集部)