違法な出産ツーリズムで中国人に3年求刑 2年で3億円荒稼ぎ 米当局はビザ厳格化

米国で出産して子どもの市民権を得ようとする「出産ツーリズム」が横行しており、米国務省はビザ規則の厳格化などで対応している。米連邦地裁は6月30日、ビザ詐欺を計画した中国人の男に、懲役37カ月以上の判決を言い渡した。被告はすでに中国に逃亡し、裁判を欠席した。

米連邦地裁から判決を受けた陳超(Chao “Edwin” Chen、 35)は、2016年6月にビザ詐欺、結婚詐欺、虚偽申告などの罪を認めた。米移民・関税執行局によると、陳はその後、中国に逃亡した。

陳は共犯の2人と、カリフォルニア州オレンジ郡で「You Win USA」という訪米手続き代行サービスを運営。外国籍の妊婦と家族から金銭を受け取り、出産前に渡米させ、米国で生まれた子どもが市民権を取得できるように企画していた。

共犯の李冬媛(Dongyuan Li、42)とその夫、閻強(Qiang Yan、44)は、米国で出産を希望する妊婦と家族に対して、米入国管理局に渡米の目的を嘘の申告をさせ、誤認させ、入国を可能にする方法を指南していた。

You Win USAの宣伝では「100人の協力チーム」により、これまで500例以上の出産ツーリズムを成功させていると謳っている。

陳と李は、オレンジ郡アーバインに20あまりの部屋を所有し、客に対してそれぞれ4万~8万ドルを請求していた。わずか2年間で、中国から国際電信送金で総額300万ドル(約3億円)を受け取った。

You Win USAは、中国ではなく米国で出産する利点について次のように紹介している。「小学校から高校までの13年間の教育が無料」「中国よりも汚染が少ない」「家族全員が米国に移住しやすい」「米政府機関や上場企業、大企業に就職しやすい」。

陳は、中国政府の職員を含む少なくとも60人の客にサービスを提供していたことを認めた。例えば、You Win USAの客の1人である劉小燕(Xiao Yan Liu)は、河南省にある商丘電力会社付属病院の主任医師だという。米当局は劉を、2018年11月にビザ詐欺2件と虚偽報告1件の罪で起訴した。

陳はまた、自らのグリーンカードを取得するために米国市民と2万5000ドルを支払い偽装結婚をして、偽りの申告書を提出していることも認めた。

陳にはこのほど、37カ月の求刑が言い渡された。李に対して2019年12月に10カ月の実刑判決が下った。閻は2018年12月に虚偽のビザ申告で起訴されている。

米移民・関税執行局によれば、これらの出産ツーリズム犯罪で起訴された容疑者のうち、少なくとも10人は中国に逃亡した。また、この犯罪サービスを利用した2人の中国人、肖俊(Jun Xiao)と易瓏靜(LongJing Yi)は、出産費用3万2291ドルのうち、わずか4600ドルしか支払っていないという。起訴状によれば、2人は裁判で米国滞在命令が出ているにもかかわらず逃亡を計画し、「米国はもう私たちに何もできないだろう」と高をくくっていたという。

事件の捜査は、米移民・関税執行局(ICE)と国土安全保障調査部(HSI)ロサンゼルス担当、内国歳入庁(IRS)犯罪捜査担当、現地アーバイン警察によって広い範囲で行われた。

 HSIロサンゼルス担当のデビッド・プリンス特別代行は、「彼らは、自分たちの利益のために、米国の法律と価値観をないがしろにした」「ビザ詐欺とそれに関連する犯罪の公安と国家安全保障への影響は、決して容認できない」として、今後も出産ツーリズムの取り締まりを強化する方針を明らかにした。

米国務省は2020年1月、米国市民権を取得するために法律が悪用されるのを防ぐため、米国訪問ビザの発給ルールを厳格化した。同省は「出産ツーリズムには、国際犯罪スキームを含む犯罪行為が横行しており、国家安全保障にリスクをもたらす」とビザ規則の変更時にコメントを出しており、出産ツーリズムの問題を重視していることを強調している。

(ELLA KIETLINSKA/翻訳編集・佐渡道世)

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