ハルビン工業大学など、米禁輸措置でソフトウェアを利用できず「製造業に打撃」
米の制裁対象となった中国のハルビン工業大学とハルビン工程大学の学生らが、米国の数値解析ソフトウェア「マトラボ(MATLAB)」を利用できなくなったことが分かった。米商務部は5月、人権侵害への関与や米国技術の軍事転用を理由に、中国の33の企業や大学を、米政府の禁輸措置の対象とするエンティティーリストに追加すると発表した。
中国のQ&Aサイト「知乎」などでは、ハルビン工業大学の学生が、MATLABを使用しようとライセンス認証を行ったが、無効と表示されたと明かした。同学生が、MATLABを開発した米企業、マスワークス(MathWorks)に問い合わせた結果、ハルビン工業大学が米政府の禁輸リストに加えられたため、ライセンスが停止されたと分かった。
MATLABソフトウェアは、数値線形代数、アルゴリズム開発、データ解析などの機能を有し、その中で使うプログラミング言語でもある。工学や理学、経済学などの分野のエンジニアや科学者が愛用している。中国の理工系大学でも、研究活動にMATLABを日常的に利用している。米政府の禁輸措置により、ハルビン工業大学などの学生が論文を発表する際、同ソフトを使ったデータ分析や図表を引用できなくなる。
ネットユーザーによると、ハルビン工業大学などは、MATLABの代わりに、プログラミング言語のパイソン(Python)に切り替えているが、研究プロジェクトや授業内容のトランスコードは講師や学生にとって大きな負担になっているという。
一方、ネットユーザーらは「MATLABの使用禁止はまだ始まりに過ぎない」と不安視した。米政府が中国の企業や大学への禁輸措置を強化し、米企業のソフトウェアが利用できなくなれば、中国製造業が壊滅的な打撃を受けるという。中国の技術者は、建築や機械設計に必要なAutoCAD、車両運動機構解析ソフトのAdams、車両シミュレーションソフトのCarSimを含む米国のソフトウェアに頼っているという。
中国工業情報化省は、ハルビン工業大学、ハルビン工程大学、北京航空航天大学など7つの大学を直接管理している。7つの大学は「国防7校」と呼ばれ、中国の軍事や国防産業、ハイテク産業に深く関わっている。一部の報道では5月末、米政府が中国軍との関わりを疑う中国人留学生のビザ(査証)を取り消して追放する計画があると伝えた。「国防7校」の学生や大学院生が主要対象だとみられる。
(翻訳編集・張哲)