【紀元曙光】2020年5月16日
さわやかな初夏。目に映る自然は、例年と変わらず美しい。
▼天下。つまり天の恵みの下に、人間の平穏な日常がある。一方、天に仇なすものには、必ず天罰が下る。まことに明快な理だが、北京の中南海にいる不遜の輩には分かるまい。その点、日本人は良い。なにしろ太陽神を国旗と仰ぐ国柄なのだから。
▼小欄の筆者は古典が好きだが、ふと気がついて、自分の長年の誤読を恥じることもある。松尾芭蕉『奥の細道』で、芭蕉が門人の曽良(そら)を連れて、東北への羇旅に立ったのが「弥生も末の7日」つまり元禄2年(1689)旧暦3月27日で、新暦5月16日に当たる。331年前の今日なのだ。
▼冒頭にある「上野谷中の花の梢、またいつかはと心細し」は、口語訳では「上野や谷中の桜が咲いている梢を、いつまた見られるかと心細くなる」でよい。しかし芭蕉は、本当に「そこに咲いている桜を見ながら」江戸を出発したのだろうか。
▼筆者は、以前から「桜を見ながら出発」と理解していた。小欄3月18日も、その認識で書いてしまった。今のソメイヨシノと違って、江戸の桜は5月中旬に咲くのだろうと思い込んでいたのだが、やはりその季節感はおかしい。芭蕉は、ここで桜を見てはいないのだ。
▼キーワードは「心細し」。旅先での客死も覚悟した芭蕉は、心中「江戸の桜を、生きてまた見られるだろうか」と思ったのだ。人の世は無常であり、命は有限で儚い。令和2年の今、筆者は特にそれを思う。例年5月の三社祭は10月に延期。浅草の祭り好きに「中止」の二文字はない。さあ東京、元気を出そう。
関連記事
研究では、生物学的年齢は生活習慣によって変わることが判明。運動、食事、睡眠、喫煙・飲酒の回避、ストレス管理の5つを改善するだけで、老化を遅らせ、寿命を延ばす可能性が示された。習慣の見直しは何歳からでも効果があるという。
初めての心不全・脳卒中の影に、実は99%以上が共通の4つの兆候を抱えていた――最新研究が示した「見逃しやすい危険信号」と、予防のために今すぐ見直すべき生活習慣をわかりやすく解説します。
人気食材アボカドには、歴史・性の健康・怪我・アレルギー・動物毒性まで意外すぎる秘密が満載。読むほど驚きが続く「7つの知られざる真実」をご紹介します。
数百年前の喫煙習慣が、なんと骨にまで刻まれていた──。最新研究が明かした「骨が語る喫煙の記憶」は、健康観を揺さぶる驚きの事実です。
浜崎あゆみの上海での公演がキャンセルされた後の行動に称賛が集まっている。中共政府の常軌を逸した日本への外交攻撃に巻き込まれたが、今回のトラブルはかえってチャンスを広げる結果となるかもしれない。