私たちは誰しも「いつまでも若く健康でいたい」と願いますが、加齢による変化はどうしても避けられません。しかし、専門家によると、生活習慣を少し見直すだけでも、老化のスピードを緩やかにし、より長く健康に生きることが可能になるといいます。
イギリス・エセックス大学の運動・リハビリ・スポーツ科学の講師ヘンリー・チョン氏と、アングリア・ラスキン大学の心理学・運動感覚科学の講師シャーロット・ゴワーズ氏は、知見を共有するウェブサイト「The Conversation」で、人には「実年齢」と「生物学的年齢」という2種類の年齢があると述べています。
「実年齢」は生まれてからの年数を指しますが、「生物学的年齢」は、細胞・血液・DNAの状態から体内の機能年齢を示すもので、しばしば「本当の年齢」や「内面の年齢」とも言われます。
研究によると、寿命に関係が深いのはこの生物学的年齢であり、実年齢ではないことが分かっています。たとえば、同じ60歳でも、生物学的年齢が若い人の方が、将来的に長生きする可能性が高いのです。
つまり、日々の生活習慣は、生物学的年齢に大きな影響を与えます。たとえば、飲酒や喫煙、運動不足は老化を早めますが、逆に適切な習慣は老化を抑える助けになるのです。私たちの寿命は、私たち自身の選択によって変わる可能性があるのです。
以下に、生物学的年齢を若返らせる5つの生活習慣をご紹介します。
定期的な運動
日常的に体を動かすことは、あらゆる死亡リスクを下げ、結果として寿命を延ばす効果があることが分かっています。
運動を始めるのに「遅すぎる」ということはありません。ある研究では、長年運動していなかった人が週3回、1回60分の運動を8週間続けた結果、生物学的年齢が平均で約2年若返ったという報告もあります。
また、週3〜4回、1回23分の筋力トレーニングや有酸素運動を取り入れるだけでも、老化の進行を大幅に遅らせることが確認されています。
健康的な食生活
バランスの良い食事を選ぶことも、生物学的年齢の若返りに直結します。特に慢性疾患や肥満のある人にとっては、その効果がより顕著に現れます。
約2,700人の女性を対象にした研究では、6〜12か月にわたって健康的な食生活を続けた人は、平均で約2.4年も老化の進行が遅れたという結果が出ています。
おすすめの食事内容は、果物や野菜、全粒穀物、ナッツ、豆類、魚、赤身のたんぱく質、植物性オイルなどを中心にし、赤身肉や飽和脂肪、砂糖、塩分の摂取を控えることです。
これらの食品には抗酸化作用のある成分、ビタミン、抗炎症物質が豊富に含まれており、細胞の修復やDNAの保護に役立ちます。また、DNAのメチル化にも影響を与えるとされています。
質の高い睡眠をとる
良質な睡眠は、健康的な老化を予測する最も重要な指標のひとつです。睡眠は体内のDNA修復、ホルモンバランスの調整、炎症の抑制、老廃物の排出などに関わり、免疫系や代謝系、神経系を若々しく保ちます。
研究によれば、1晩の睡眠が5時間未満の人は、糖尿病や心疾患、がん、認知症などの加齢に関連する病気のリスクが高まることが明らかになっています。
さらに、イギリスで約20万人を対象にした大規模研究では、夜勤などのシフト勤務者は、通常の勤務時間の人よりも生物学的年齢が約1歳高いという結果も報告されています。
有害な習慣を避ける
喫煙(電子タバコも含む)や飲酒は、老化を早める最も強い要因とされています。ある研究では、喫煙が肺の老化を最大4.3年、気道の細胞の老化を約5年早める可能性があると指摘されています。
また、8,000人以上を対象とした研究では、飲酒量にかかわらず、アルコールの摂取自体が生物学的年齢を押し上げるという結果が出ています。飲む量が多いほど、その影響も大きくなります。
こうした習慣はDNAを直接傷つけ、体内の炎症を悪化させ、細胞に大きな負担をかけるため、老化を加速させる原因になります。
ストレスを上手にコントロールする
ストレス管理も非常に重要です。感情のコントロールやストレスへの対処能力は、老化のスピードを左右する要因として注目されています。
別の研究では、週に平均40時間を超えて働く人の生物学的年齢が2年も高くなる傾向があり、その背景にはストレスが関係していると考えられています。
ストレスはホルモンのバランスを崩し、DNAを傷つけ、免疫力を低下させることで、老化を加速させます。また、ストレスによって食事の偏りや睡眠の質の低下、過度な飲酒や喫煙など、他の悪習慣を引き起こすこともあるため、心の健康を整えることは、体全体の若さを保つうえで非常に重要です。
(翻訳編集 華山律)
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