英国の国会議員らは、イマジネーションの支配権変更が国家安全保障への潜在的な脅威だとして、ボリス・ジョンソン首相に介入するよう働きかけている(Justin Sullivan/Getty Images)

英半導体メーカー、中国国有企業が支配権握る恐れ 議員ら政府介入を求める

半導体メーカーの英イマジネーション・テクノロジーズは、中国国有企業・中国国新ホールンディング(China Reform Holdings、中国国新)から4人を取締役に就任させることを検討している。英国の国会議員らは、同社の支配権変更が国家安全保障への潜在的な脅威だとして、英政府の介入を求めている。英スカイ・ニュースが6日に報じた。

報道によると、イマジネーションは来週の4月14日にも緊急取締役会を開く予定だ。情報筋によれば、イマジネーションの最高経営責任者ロン・ブラック氏を含む他の複数の幹部は、取締会役員が入れ替われば、早くて今週中にも辞任する見通しだという。

2017年9月、中国国新は、ケイマン諸島(イギリス領)を拠点とする中国系の未公開株投資ファンド、キャニオン・ブリッジ・キャピタル・パートナーズ(Canyon Bridge Capital Partners)を通じて、イマジネーションを買収した。買収額は5億5000万ポンド(約803億円)。

イマジネーションは、米アップルや韓国サムスンなどに画像処理装置グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)を製造し、英国で最も重要なハイテク企業の1つ。 同社技術を使用した製品は世界の携帯電話の3割、自動車用GPUの4割に搭載される。アウディ、トヨタ、ヒュンダイなどの自動車メーカーも採用している。公式説明によれば、世界中の何十億人もの人々が、イマジネーションの知的財産を含むさまざまな製品を使用している。

イマジネーションの取締役会に中国国務院が管理する企業の幹部が就任すれば、英国の重要な知的財産が中国に移転する恐れがある。伝えられるところによると、イマジネーションは中国国内に編成する可能性もあるという。

英政府の高官は、同国の情報機関・政府通信本部(GCHQ)と国家サイバーセキュリティセンターも、イマジネーションの取締役会の動きを把握しているという。

イマジネーションは、取締役の変更を避けるためにどのような手段があるのか、法律相談を行っているという。

ウイルス肺炎流行のなか 取締役会メンバー変更の動き

中国国有企業の手に、世界的な大企業が重視する英国の知的財産が渡れば、安全保障問題にも関わってくる。ある情報筋によると、英政府が流行する中共ウイルス対応に力を注ぐなか、世間からの注目を避ける狙いがあるという。

イマジネーションは英国で約650人、世界を含めると合計900人の従業員を擁している。 昨年の特許出願数は英ダイソンと日本のソフトバンクが所有する半導体企業ARMホールディングスを上回り、英国では10位となっている。

イマジネーションは1月に米アップル社と新たなライセンス契約を締結しており、米トランプ政権は、中国国有企業によるイマジネーションの買収に介入する可能性もある。 ある情報筋は、米中貿易戦争を背景に、ワシントンは買収に反対する姿勢を崩さないだろうと指摘する。

2017年9月、トランプ大統領は対米外国投資委員会(CFIUS)に指示し、前出の中国系投資ファンド、キャニオン・ブリッジによる米半導体大手ラティスセミコンダクター(Lattice Semiconductor)の買収を阻止した。これを受けて、キャニオン・ブリッジは本社を米国シリコンバレーから、「タックス・ヘイブン」と呼ばれるケイマン諸島に移転した。

国会議員、政権に見直しを求める

英議会外務委員会のトム・トゥゲンドハット(Tom Tugendhat)委員長を含む有力議員らは、取締役会のメンバーの変更の見直しを求めて、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相あてに書簡を送った。

下院の4つの委員会の委員長は連名で、イマジネーションの幹部を調査するため、米CFIUSと連携するよう首相に求めた。トゥゲンドハット委員長はスカイ・ニュースで「英国からのハイテク技術の移転は、雇用を犠牲にしているだけでなく、イノベーションの基礎を犠牲にしている」と語った。

EU離脱事務局長のデイビッド・デイビス(David Davisう)氏もまた、中国企業の背景を調査するよう閣僚に促す書簡を送っている。スカイ・ニュースが入手した書簡によると、デイビス氏は閣僚に対して「必要に応じて、取締役会が変更されないよう介入する」よう求めた。

2016年の英国の欧州連合(EU)離脱に関する国民投票以降、政府は英国企業の外国企業買収に対する規制強化を模索してきた。テリーザ・メイ前首相が在籍中、テクノロジーなどの分野での資産の合併・買収について、より厳格な国家安全保障評価を導入し、購入側に問題が見られる場合は政府に通知することを義務づけた。2016年にソフトバンク(SoftBank)がARMホールディングスを240億ポンドで買収して以降、こうしたM&Aの精査が厳しくなっている。

 

(翻訳編集・李沐恩)

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