社会主義に対する反証
アメリカの若い世代の間で社会主義が台頭している。最近のギャラップ調査によると、45%の若いアメリカ人(18~29歳)は資本主義に肯定的であり、51%が社会主義に肯定的である。
若者が社会主義に傾倒する理由はいくつか挙げられる。2000年後半に始まった不景気を経験したこと、メディアが社会主義の害についてほとんど報道してこなかったこと、またアメリカの大学で盛んに社会主義イデオロギーが教えられていることである。
現在、民主党進歩派リーダーのバーニー・サンダーズやエリザベス・ウォーレン、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏などが社会主義を推進している。
その結果、人々は社会主義が一体何なのかが分かっていない。社会主義は何百万人という人々を殺し、失敗を重ねてきたが、それについてメディアや政治家が言及することは少ない。
元医師でケンタッキー州の上院議員ランド・ポール氏の著書『The Case Against Socialism』(社会主義に対する反証)を紹介しよう。彼は、社会主義とはスピリチュアルな病気であり、それに対する予防をしなければならないと主張する。
社会主義が成長すると、行き着く先は政府が全てを管理する共産主義である。ポール氏は本の中で、社会主義を擁護する意見に対し、一つひとつ反論している。
誤解:政府が民間セクターを管理することはいいことだ。
反論:ベネズエラのケースを見るといいだろう。ベネズエラは産油国として、かつて活気ある経済中進国だった(同国は今でも石油埋蔵量世界一である)が、政府の経済介入により破たんした。民間企業を次々と国有化した結果、経営が悪化した。2014年当時、48%だった貧困率は、2017年に87%と増加した。今日、ベネズエラでは経済崩壊による人道危機が指摘されている。
誤解:貧富の間の収入格差が広がると、経済成長が停滞する。
反論:実際、金持ちはさらに金持ちになるが、貧困層も同じである。簡単に言うと、波が高まればすべての船が持ち上がる。低収入者も、以前には入手できなかったモノやサービスを消費できる。歴史的に、ここまで世界が豊かになったことはない。
誤解:北欧の社会主義が模範である。
反論:2015年、デンマークの首相はバーニー・サンダーズ氏に対して、デンマークに社会主義というレッテルを貼り、侮辱するのはやめてくれと言った。北欧は確かに重税と寛容な福祉制度がある。しかし、それが彼らを社会主義者にするわけではない。重税と福祉制度は、資本主義の民主制度のもとに作られた。
実際、この大きな政府と私的所有権の融合は、タダで入手できるわけではない。これらの福祉国家の中間層に対する課税率は世界一である。歴史的に、北欧諸国は中流階級に対して高い税率を課してきたが、一方で彼らはその恩恵にもあずかっている。国民全員が無料の教育と健康保険を利用できる。かつて、北欧諸国は民族的に文化的なアイデンティティーが均一であり、優先順位を決めることが簡単だった。しかし、移民の増加と共に、その政策に亀裂が生じている。
誤解:歴史を通じて、社会主義は全体主義を倒してきた。社会主義はよい勢力である。
反論:近代政治の歴史の中で、最も皮肉なのは、社会主義が全体主義を倒した後、彼らは同じことをする。彼らは自由な民主主義を打ち建てると主張するが、いったん権力を握ると、今度は彼ら自身が独裁国家を樹立するのである。
誤解:社会主義が気候変動問題を解決できる。
反論:最も熱心な気候変動の信奉者であっても、これは公害や気温変化の問題に過ぎないことを知っている。脅威説を唱える人々の真の目的はグローバルな富の分配であり、世界的な社会主義制度の仕組みを作ることである。気温の上昇は自然現象なのか、それともどのくらいが人的に由来しているのか、理性的に議論することが重要だ。冷静な分析をもとに、資本主義制度で解決策を模索するべきである。
誤解:社会主義によって最も基本的なニーズが満たされるため、創造力がアップする。
反論:これは誤りである。社会主義のもとでは、人々のすべての思考が管理される。思考の自由を許したら、社会主義と政権リーダーの本質が分かってしまうからだ。政府が経済を完全に支配するということは、同時に経済活動に参加する人々をも支配することになる。
誤解:社会主義は暴力的ではない。
反論:もし社会主義が暴力的でないのなら、なぜ国家は人々の私有財産を没収するのだろうか?人々が無抵抗に自分の財産を手放すだろうか?国家は服従しない人々を罰するようになり、その罰則はだんだん重くなるだろう。最終的には、抵抗者を粛清するようになる。
希望はあるのか
アメリカで社会主義を支持する若者が増えている。しかし、ポール氏はそれでもアメリカに希望を見出したいと語る。自由な市場と自由な人々の方が健全であり、寿命も延び、貧困や世界の苦難も減少すると同氏は主張する。ポール氏は著書で、若者たちが自由を選択することを期待していると締めくくっている。
(英文大紀元寄稿文 Linda Wiegenfeld/翻訳編集・郭丹丹)