中国武漢の肺炎、ネットに「家族全員が感染」との投稿 当局情報隠蔽の恐れ
中国湖北省武漢市当局は1月16日、新型コロナウイルスによる肺炎で69歳の男性が死亡したと公表した。死者はこれで2人目となった。いっぽう、中国のSNS「微博」に複数のユーザーが「感染した」と報告し、当局が情報を隠蔽していると批判の声が上がっている。
武漢市の衛生当局が16日深夜、69歳の男性の死亡を報告したが、15日までに新たな感染者はいないとした。当局は、「これまでに41人の患者が確認されている」と今までの見解を繰り返した。
「病院は発熱者で溢れていた」
これに対して、インターネット上では懐疑的な見方が広がった。武漢市在住のユーザーは16日、中国版ツイッター「微博」に投稿し、地元の同済病院は「発熱の人で溢れていた」と書き込んだ。
微博ユーザー「樹先生sss」の投稿によると、両親と自身に新型コロナウイルス肺炎の症状が出た。「1月9日、父親が最初に発熱した。武漢の新華医院に行き、CTを撮り血液検査などを受けた。肺に影があるとわかって、3日間、治療を受けたが、良くならなかった。それで武漢市の同済医院に行った」
「(同済)医院には発熱専門の外来診療がある。この病院に入ると、受診患者は皆発熱していると知った。人が廊下の通路にまで横たわるほどあふれていた。父は同済医院ですべての検査を受け、2回の注射を受けた。それでも、医者に帰宅するよう促された。ベッドが足りないと入院を断られた」
「帰宅した父は、呼吸困難に陥り、熱も下がらなかった。最後にやっと金銀潭医院に運ばれた。病院は父の症状が重いと判断して入院を認めた」
同ユーザーは、自身と母親も3日間連続発熱し、CTを撮った結果肺に影があると話し、自身が病院から受け取った診察報告書の写真を付け加えた。
さらに「2日間も注射を受けたが、全く良くならない。心細くて、どこに行けば治療を受けられるのかがわからない。金銀潭医院に電話しても、外来診察がないので注射ができないと言われた」と嘆いた。
「樹先生sss」の投稿に対して、ある「微博ユーザー」がネット検閲当局に通報した。「樹先生sss」は安全のために、投稿を削除することにした。しかし、「投稿は事実をわい曲しておらず、事実に基づいて書いた。当初投稿をした目的は、皆さんに注意してほしいからだ」と強調した。
現在、「樹先生sss」の投稿は全部削除された状態となっている。
微博では、武漢大学医院のスタッフと称するユーザーが「私たちの病院で、すでに数例がある。厳重に隔離されたけれど、本当に恐ろしい。SARS(重症急性呼吸器症候群)の可能性がかなり高いと言われている」とのコメントを書き込んだ。また、他の地方にいる武漢出身者は微博に「(武漢にいる)家族全員が発症した」と投稿した。
「愛国ウイルスか?」
韓国、タイ、ベトナムに続いて、日本でも16日、武漢で発生した新型コロナウイルス肺炎の患者が1人確認された。
湖北省武漢市を除き、中国のほかの省の感染情報は公表されていない。
中国人ネットユーザーは、新型コロナウイルスについて、「外国に(患者は)出るが、省からは出ない」「政治思想の高い愛国ウイルス」と皮肉った。
「新型コロナウイルスは海外まで広まったのに、国内では武漢市しかない。情報をいつまで隠すのか?自分を騙して他人も騙しているということではないか」
「ウイルスはタイと日本まで広がっているのに、大陸では感染が広まってないのが不思議だ。このウイルスは愛国者か、それとも侵略者か?」
「政府の報道は全く信じない。これほど深刻なのに、毎日の患者が増えていないって?」
各国報道によると、ベトナム、タイ、日本で確認された患者は、感染源とされる武漢市の海鮮市場に立ち寄っていなかった。新型コロナウイルス肺炎はヒトからヒトの感染の可能性があるとの見方が出ている。
香港に本部を置く中国人権民主化運動情報センターは、湖北省に隣接する6省の総人口が4億人に達しており、同地域では人の往来が多いため、「武漢市以外の省・市で感染例が報告されていないのは、明らかに当局が隠ぺいしている」と批判した。
専門家「新型ウイルスはSARSだ」
独メディア「ドイチェベレ」中国語電子版1月15日付によると、同国の専門家は、新型コロナウイルスについて「SARSウイルスの一種だ」との認識を示した。
ドイツのウイルス学専門家クリスチャン・ドロステン(Christian Drosten)氏は、武漢市で発生した新型ウイルスは、「2003年に流行したSARSのウイルスと非常に似ている」「同一種のウイルスであるが、形態が違うだけだ」と話した。
ドロステン氏は「今回のような未知のウイルスによる感染はだいたい10年ごとに1度現れる」とし、ヒトからヒトへの感染の可能性を「排除しない」との考えを示した。
(翻訳編集・張哲)