国籍目的の「出産ツアー」防止策 サイパン行きの便で妊娠検査
太平洋の島・サイパン行きの飛行機の搭乗者のなかで、ふくよかな女性には、妊娠検査が行われている模様だ。米当局は、サイパン島で出生と同時に付与される米国籍を狙う外国籍妊婦の「出産ツアー」を問題視し、防止策を取っている。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、西田みどりさん(25)は2019年11月、香港国際空港発サイパン行きの香港エクスプレスの搭乗手続き前に、航空会社職員から医療検査を受けるよう求められた。
彼女の体型が理由で医療検査の対象になった可能性があると、ある職員は彼女に伝えた。検査の承諾書には「グランドスタッフによる日常の初期安全検査のなかで、健康上の問題のため、妊娠中の体型に似た女性乗客は検査される」とあった。
多くの航空会社は、妊娠36週未満であれば、特別な診断書がなくても航空機に搭乗することを許可している。一部の国際線を持つ航空会社は、妊娠28週以降の渡航は控えるよう促している。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、香港エクスプレス航空は2019年2月以降、香港-サイパン間の便には特別に、妊娠20週以上の米国籍ではない妊婦の搭乗を拒否しているという。同社によると「サイパン当局の懸念に応じた(入境者が)米国移民法に違反しないため」の対応だという。
サイパン島は女性、特に中国人に人気の高い観光地になっている。出生無条件市民権付与制度を利用して、サイパンで出産し、子どもの米国籍を取得する人が増加している。サイパン島のススペを主都とする人口5万人の北マリアナ諸島では2018年、同地域での出産件数に関して、訪問客が住民を超えた。
2009年に中国ビザ免除プログラムが導入された後、中国市民はビザなしで北マリアナを訪問できる。
ミクロネシアのメディア、パシフィックアイランドタイムズ2017年の報道によると、出生無条件市民権付与制度を濫用した国籍取得目的の出産ビジネス、いわゆる「出産ツアー」を取り扱う中国の旅行代理店は、空港送迎、滞在中の宿泊、妊婦とベビーのケアなどのサービスを提供している。
米当局は2019年1月31日、カリフォルニア州で、「出産ツアー」を企画運営していた中国系の経営者20人をビザ詐欺や資金洗浄などの容疑で逮捕、起訴した。
(KATABELLA ROBERTS/翻訳編集・佐渡道世)