米の「香港人権・民主主義法」は、香港紙「大公報」と「文匯報」を名指して、制裁対象にするとした(宋碧龍/大紀元)

米「香港人権法」、親中メディア2社を名指して批判 所属記者を制裁へ

米トランプ大統領が11月27日に署名し、成立した「香港人権・民主主義法」は、香港市民の人権などを侵害する、親中派メディアの記者も制裁対象にすると明記している。

同法の第9章は、香港紙の「大公報」と「文匯報」を名指して、中国当局の支配を受けるメディアが民主活動家や米国などの外交官とその家族に対して、嫌がらせを行い悪意に中傷したと非難した。同法によって、米国務長官が中国当局に対して、香港や他の地域の報道機関を利用して虚偽情報の流布やどう喝をやめるべきだと指摘した。また、国務長官に対して、これらのメディアに所属する記者の米国入国ビザを厳しく審査するよう要求した。

両紙は、香港大公文匯伝媒集団が発行する新聞紙だ。

香港人権・民主主義法案が、9月に議会で審議されていた際、すでに大公報と文匯報を批判していた。大公報は、米政府の制裁対象になる可能性が大きいと察知した。9月29日に掲載した評論記事で、大公報は、同紙と文匯報の記者が「いわゆる民主主義と人権尊重を抑圧する政府幹部と法執行機関の関係者と共に、(米の)入国ビザ監察リストに入れられる」「米国への入国が禁止され、米での資産も凍結される」とした。

その後、大公報と文匯報はそれぞれ声明を発表し、「報道の自由を守っていく」と主張した。香港のインターネット上では、両紙の声明について、「米国の報道規制を批判する顔があるのか?中国本土がまず報道の自由を保障し、国民に海外メディアの報道を目にすることができるようにし、記者らに取材の自由を認めてから、はじめて『報道の自由』を口にできるのではないか」と糾弾した。

米外交官の個人情報を流出

大公報は8月の報道で、香港の米総領事館の政務担当職員ジュリー・イーデー(Julie Eadeh)氏の個人情報と子どもの名前を公表した。記事は同氏が民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏らと面会した写真を掲載し、「外国勢力が香港の抗議デモを扇動した証拠だ」と批判した。

米国務省の高官は、AFP通信への取材で、「同日、米政府の外交官が親中派と民主派の議員、米企業の代表者などとぞれぞれ会談した」と話し、大公報の記事が意図的に印象操作を行ったと批判した。

中国官製メディアは、香港の抗議活動について一貫して「西側勢力が介入した」とプロパガンダを行っている。

米国務省のオルタガス報道官は8月8日の記者会見で、大公報の報道に関して「暴力的な政権の振る舞いだ」と強く非難した。しかし、同紙は9月に再び米総領事館の職員を中傷する報道を行った。

虚偽報道

9月6日、抗議デモを批判する香港立法会(議会)の親中派議員、何君尭氏が同日午前、街で男に刃物で刺された。香港のネットユーザーは、「大公報」のフェイスブック・アカウントが前日の夜8時にすでに何氏が刺されたと報じたと指摘した。同紙は指摘を受けて声明を公表し、フェイスブックのアカウントがハッキングされた可能性があり、記事の掲載時間が変更されたと説明した。

11月24日の区議会選挙では、民主派が大勝したにも関わらず、大公報は、「建制派(親中派)は固く暴力に反対、得票率55%増」とのタイトルで選挙結果を報じた。

香港の「紅色メディア」

在米中国人経済学者、何清漣氏は2011年に執筆した評論記事で、香港メディアが中国マネーによって浸透され、支配された実態を紹介した。

何氏によると、香港の親中派メディアには2種類ある。1つは、「大公報」「文匯報」「香港商報」「鳳凰衛視」「星島日報」など中国資本に買収されたグループだ。1997年に香港の主権が中国に移る前、香港にいた中国共産党の地下党員がこれらのメディアの責任者を担当していた。97年以降、中国当局が直接に各メディアに責任者を派遣した。「たとえば、文匯報の前会長兼社長の張国良氏は国営新華社通信から赴任した」という。

大公報と文匯報は2016年2月に合併し、香港大公文匯伝媒集団を設立した。大公報の姜在忠・社長兼会長は、同グループ会社の会長を務める。姜会長は、以前国営新華社通信の内モンゴル自治区支社の社長だった。

米ラジオ・フリー・アジア(RFA)が2016年2月、姜会長は「国営新華社通信に在籍したままだ」と伝えた。

何清漣氏は、これらのメディアは「もともと、党の香港での代弁者である。現在は官製メディアの『専門家』が管理しているため、ますます人民日報や新華社の支社に似てきている」と示した。

同氏によると、もう1種類の親中派メディアは、「東方報業集団」や民放テレビ局の「無線電視」など、香港の富豪が経営するメディアだという。香港返還前、香港の知識人が相次いで新聞社を立ち上げた。返還後は、親中派の富豪らがメディア業に興味を示し、次々と新聞社やテレビ局を買収し、「北京のために、言論の砦を片付け始めた」という。

(翻訳編集・張哲)

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