オーストラリアに亡命した中国の元スパイ、王立強氏は、李源潮・元国家副主席が動画配信大手の「楽視網」の所有者だと暴露した。写真は李氏(Getty Images)

中国元スパイ、動画配信大手楽視網「李源潮氏をめぐる政治闘争」で破産

オーストラリアに亡命した中国の元工作員・王立強氏は豪政府に提供した情報の中で、李源潮・元国家副主席に言及した内容がある。王氏によると、李源潮氏が中国ネット動画配信会社「楽視網」の事実上の所有者で、党内の権力闘争に負けた後、香港に逃れたという。米紙ワシントン・タイムズが6日報じた。

同報道によると、王立強氏は豪政府に対して、香港株式市場に上場する「中国趨勢控股有限公司(チャイナ・トレンド)」が中国の情報機関で、軍事情報を収集するほか、党内の権力争いに失敗し香港に逃れた元高官らを監視しているとの情報を提供した。

李源潮・元国家副主席が2013~18年までの権力闘争で政敵に敗北した後、「香港への撤退を余儀なくされた」という。王立強氏自身も他の工作員らとともに、李氏夫妻に圧力をかけ、「中国本土に戻り、当局の取り調べを受けるように」と要求し、「李氏が掌握する楽視網を狙った」という。

楽視網は2004年に創業した。動画配信で事業拡大した後、テレビやスマートフォン、自動車製造などの分野も手掛け、グループ企業に成長した。2010年、深セン証券取引所に上場した。2016年以降赤字経営が続き、同社は今年5月に上場の一時停止を発表した。

また、中国の証券監督管理委員会は今年4月、情報開示において違法行為があったとして、楽視網を捜査すると発表した。米国にいる創業者の賈躍亭氏は10月、個人破産を申請したと報じられた。

ワシントン・タイムズによると、王立強氏は、楽視網の経営難について「政治的な要因で引き起こされた」「党内の派閥抗争で楽視網が倒産に追い込まれた」と話した。

同紙の報道を受けて、李源潮氏側は7日、香港の親中派メディア「星島日報」を通して反論を行った。

星島日報は、李氏と学友との食事会の様子を撮影した動画が「ネット上に投稿された」とした。動画の中で、李氏は「今私に関する噂話が多いから、それにいちいち反論するのは面倒くさくなった」「(党中央)組織部長を務めたから、多くの人の恨みを買ってしまった」と話したと紹介。

李源潮氏の父・李幹成氏は1920年代後期に中国共産党に入党し、同じく江蘇省出身の江沢民元国家主席の叔父・江上青氏と近い関係だった。1960年代、同氏は上海市副市長などを任命された。このため、李源潮氏は、毛沢東ら革命世代の子弟である「紅二代」と呼ばれ、江沢民派や太子党、共産主義青年団(共青団)など幾つもの派閥を渡り歩いていたとみられる。

江沢民政権の下で、李源潮氏は2003~07年まで江蘇省党委員会副書記、同委員会書記を務めた。2007~12年までは中国共産党中央政治局委員、党中央組織部長、党中央書記処書記を歴任した。

2012年11月に開催された党大会で習近平政権が発足した。これ以降、薄熙来や周永康などの江沢民派によるクーデターが明るみにでた。習氏側は「反腐敗キャンペーン」を主導し、江派の核心人物を次々と失脚させた。李源潮氏の元部下で、李雲峰・元江蘇省副省長なども当局の取り調べを受けた。

2014~15年にかけて、一部のメディアが、李源潮氏と令計画・元党中央弁公庁主任が「派閥を作っていた」と報じた。江蘇省トップだった李氏は同省政界の汚職に「責任を負うべきだ」と主張するメディアもあったため、2017年11月の党大会開催までに、李氏の失脚がささやかれた。結果的に、同党大会で李氏は中央政治局委員に再任されず、中央委員にも選出されなかった。この時、李氏はまだ66歳で、政界引退の年齢である68歳に達していなかった。事実上の更迭だったとみられる。

(翻訳編集・張哲)

 

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