香港の抗議デモに、若者は「将来を守ろう」と書かれたプラカードを掲げて参加した(宋碧龍/大紀元)

中国、香港富豪の李嘉誠氏を大バッシング 何清漣氏「香港経済の完全掌握を狙う」

香港一の富豪、李嘉誠氏が9月12日、香港デモに参加する若者に対して「寛大な態度で対処してほしい」と中国当局と香港政府に訴えたところ、中国共産党中央政法委員会は、李氏が「犯罪を放任している」と非難。党機関紙・人民日報も李氏を念頭に批判を展開した。また、ロイター通信は13日、中国当局がこのほど国有企業約100社のトップを深セン市に集め、香港の不動産や観光業などの主要業界に対して投資を強化するよう要請したと報道した。

米中国人経済学者の何清漣氏は18日、大紀元への寄稿記事で、一連の出来事から中国当局は香港の「官僚と実業界による共同統治」を終わらせ、「2次返還」を図り、香港経済を完全に掌握することを狙っているとの見方を示した。

李嘉誠氏へのバッシング

李氏は12日の慈善イベントに出席し、香港警察による抗議者への暴力を念頭に発言した。13日、中国当局の批判を受けて、李氏は「寛大に対処することは、放任を意味することではない」と説明した。

人民日報は12日、「住宅問題の解決、香港はもう待っていられない」とのタイトルを付けた評論記事を掲載した。記事は、香港の住宅問題が日増しに深刻化していると指摘し、「これが、若者が将来に失望し、逃亡犯条例改正案の抗議活動に参加した原因だ」とした。さらに、香港不動産企業に対して「土地を買いだめしないでください」「これこそが、香港の若者に対する寛大な態度である」と暗に李嘉誠氏を批判した。

人民日報が評論記事を発表した後、中国国内メディアは李嘉誠氏に対してバッシングを始め、「90歳の李嘉誠氏、このように人民日報に報じられると思いつかなかったか」「李嘉誠氏に残された時間はもう少ない」などのタイトルで人民日報の記事を転載した。

香港の第2次中国返還

ロイター通信13日の報道によると、深セン市に集まった国有企業約100社のトップに対して、中国当局は香港企業の株式を保有するだけでなく、企業の経営決定権も持つよう指示したという。出席した国有企業の幹部の1人は「香港の実業家は十分に働いていない。彼たちの大半はわれわれの仲間ではない」と話した。

中国国内メディアは17日、香港の親中派政党、民主建港協進連盟が香港政府に対して、「土地回収条例」の導入を提言したと報道した。同条例を発動すれば、930万平方メートルの土地を保有する香港不動産大手4社に対して農地を回収し、住宅用地にすることができる。

何清漣氏は、ロイター通信などの報道と李嘉誠氏に関する人民日報の評論記事は「中国当局が今後、香港経済を全面的に支配しようとする意図を明瞭にした」と指摘した。

同氏によると、中国当局は民主化を求める雨傘運動が起きた2014年、すでに香港の富豪に対して不満を抱いていた。中国紙・中国日報は同年10月25日の評論記事で、李嘉誠らの富豪が沈黙を保ち、中国当局への支持を示さなかったことを非難した。中国当局は、香港の富豪が当局の後押しを受けて、香港だけではなく中国国内市場でも事業を拡大できたため、彼らは当局への忠誠心を示すべきだと見ている。「中国当局の長いアームとして、政治的義務も課された」と同氏は指摘した。

何清漣氏は、中国当局が李嘉誠氏をやり玉に挙げた主因は3つあると分析。1つ目は2011年から、李氏の率いる企業が次々と中国国内の不動産を売却し、資金を引き揚げたことが挙げられる。2つ目は雨傘運動の時、李氏が中国当局と香港政府への支持をはっきりと示さなかったことにある。3つ目は、今年6月から始まった抗議活動において、まず李氏が8月16日に新聞各社に広告を掲載し、「愛で怒りを鎮めよ」「暴力をやめよ」と呼び掛け、そして今回、抗議デモに参加する若者に「寛大に対処するように」と求めたことだ。

何清漣氏は、中国当局の「香港第2次返還」計画が成功し、または米議会で香港への優遇措置を毎年見直すと規定する「香港人権・民主主義法案」が可決すれば、「東方の明珠である香港は輝きを失うだろう」と懸念を示した。

(翻訳編集・張哲)

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