黄之鋒氏、周庭氏など、香港で若手活動家らが相次ぎ逮捕された。写真は2019年6月、周庭氏の来日時に撮影(Photo by Keith Tsuji/Getty Images)

民主派政党、黄之鋒氏と周庭氏の逮捕に声明「恐怖を煽っている」

香港の民主派政党・香港衆志(デモシスト)の黄之鋒氏(ジョシュア・ウォン、22)と周庭氏(アグネス・チョウ、22)が相次ぎ逮捕された。31日には民主派団体が大規模なデモを予定しており、影響力のある若手指導者の言動を制止する狙いがある。

民主派の香港政党・香港衆志は、両氏が30日朝、逮捕されたと発表した。

発表によると、30日朝7時半頃、黄氏は港鉄の海怡半島駅に向かう途中、接近してきた乗用車に突然、押し込まれて連行された。周庭氏は朝、自宅にいたところ連行、逮捕された。

香港警察は2人の逮捕を認めた。2人は許可されていない集会への参加を扇動、組織、参加などの容疑をもたれているという。

香港民族党の陳浩天氏も29日夜、香港国際空港から出国しようとしていたところ、逮捕された。香港メディアによると、逮捕理由は、デモに関連するという。

3人のほか、暴行被害を受けた人もいる。29日正午ごろ、デモの情報を共有していた民主運動家の岑子傑氏は、数人の友人とともにレストランで食事していたところ、鉄製の棒を持った2人のならず者から暴力を受けた。岑子傑氏をかばった友人は病院に搬送されたという。

同日、地下鉄における無差別攻撃に抗議するデモ「光復元朗」を呼び掛けた鍾健平氏は、現地メディアTMHKによる路上での取材中、4人の東南アジア系の男から鉄パイプや雨傘で殴打された。一緒にいた記者も負傷した。

香港民主派団体の「民間人権陣線」(民陣)は8月31日にデモを計画していた。しかし、警察当局は民陣の31日のデモ申請に不許可を通知した。これを受けて、民陣は「市民の安全を確保できない」との理由で、デモの開催をキャンセルした。

メンバー2人の逮捕を受け、香港衆志は声明を発表した。「31日に予定されているデモの前、抗議者を多数逮捕し、恐怖の雰囲気をあおっている警察当局に強い憤りを感じる。中国共産党が名指しして批判する運動の指導者を逮捕することによって、デモの背後に黒幕が存在するという共産党の論調を強調しようとしている」

「今回のデモに指導者も黒幕もいない。市民をデモへの参加に『扇動』したのは林鄭月娥(キャリー・ラム)香港行政長官の暴政と暴力だ。全ての市民は自身の良識からデモに参加している。これは揺るぎない事実だ」

緊張高まる香港情勢

林鄭月娥行政長官は、混乱を収束するため、通信や集会を制限できる「緊急状況規則条例」(緊急法)を発動する可能性がある。林鄭長官は28日の記者会見で、中国軍の支援は不要と明言した。しかし、中国官製メディア・新華社通信は25日の論説で、北京には「混乱に歯止めをかけるため、軍事介入する法的権限と責任がある」と警告した。

29日未明、多くの中国人民解放軍が香港に進入した。中国軍の車両は装甲車、装甲兵員輸送車、トレーラーなどで、幹線道路や東トンネル、大潭道、沙頭角道路、沙田などに配置された。中国政府は「香港駐留部隊の定期交代だ」と説明した。

緊張が高まるこのタイミングでの定期交代について、デモを武力弾圧するための準備ではないかと憶測が飛び交っている。

香港衆志・副党首の鄭家朗氏は30日朝、ラジオ番組に出演して、メンバーらの逮捕は「香港の人々を怖がらせることはできない。不満を蓄積させるだけだ」と表明した。

雨傘運動由来の政党・香港衆志

2014年8月31日、中国の全国人民代表大会(国会相当)が、共産党の支持しない候補者を選挙から除くルールを含む決議を通過させた。これに抗議するため、黄之鋒氏ら学生、市民が3カ月にわたり「雨傘運動」と呼ばれる抗議活動を展開した。運動から5周年に当たる31日のデモには多数の市民が参加するとみられていた。

黄氏は2016年、雨傘運動を率いた羅冠聡氏、仲間で「民主の女神」と呼ばれる周庭氏と共に、香港の自決権を掲げる政党・香港衆志を創設した。2018年1月に黄氏は禁固刑を受け、2019年6月17日に出所したばかりだった。黄氏は出所後まもなくして米国外交官と面会したり、米FOXニュースのインタビューに答えるなどして、香港における国際的な関心の高まりを促してきた。

周庭氏は2017年6月および2019年6月に日本の外国人記者クラブで会見し、香港の情勢について語っている。SNSでも日本語で頻繁に、民主派市民の行動を映像や写真と共に伝えていた。

2014年10月初頭、米国「タイム」アジア版は、当時の25人の最も優秀な青年の一人に黄氏を挙げた。2018年初め、米国議会議員12人は香港の民主化に力を注ぐ黄之鋒氏、羅冠聡氏、周庭氏を2018年ノーベル平和賞に推薦した。

(翻訳編集・佐渡道世) 

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