論語は西洋近代経営学に先んじていた
「近代経営学」の父と言えばP.F.ドラッカーでしょうが、その「完全雇用」とはあくまでも「自由主義」という、アダム・スミスの説いた理論が土台でした。
つまり、アダム・スミスは「近代経済学の父」であるのみならず、「近代経営学の大地」でもあるでしょう。
「論語」は、このスミスの思想に影響を与えたと思われるのです。
日本では、「論語」にある「仁」(人を愛する)や「恕」(人の身の上や心情への同情、思いやり)などは、江戸時代の大商人の家訓に定めれれていました。三井家や住友家です。
こうした家訓のことも意識して渋沢栄一が執筆したのが「論語と算盤」です。タイトルを現代訳すれば「倫理・思いやり と 計数管理・経営」となるでしょう。
渋沢が経営に「倫理」(道徳)や「利他」(他者の為)を唱えたのはドラッカーよりも早かったと言えますが、「近代経済学の父」として、経営学に大きな影響を与えたアダム・スミスが、「倫理と利益を両立させて経済を発展させる」という考え方をもっていました。
アダム・スミスの頃のキリスト教社会では、「金儲けは不浄」とする昔ながらの考えが広まっていました。そんな中でスミスが主張した「道徳感情論」は、フランス啓蒙思想によって「他者の為になることをする倫理」を掲げていました。
「論語」は17世紀に中国・明や日本へ来たイエズス会の宣教師がラテン語に翻訳し、フランス啓蒙思想の重鎮であるモンテスキューらに影響を与えたのでした。
このように、論語はいろいろなところを巡りましたが、ラテン語約を介して英語などにも翻訳され、近代の経済学や経営学に影響しています。
そんななかで、日本では昭和初期までは漢文という形で「論語」の原文を読んだ人が多数存在し、そこで得た知識が国民の中に蓄積されてきています。
倫理・思いやり。一見、ビジネスとはかけ離れたように見える二つ、実は最も早くビジネスに取り込んでいたのは日本かもしれません。だとすれば、「日本型経営」の良さも見えてくるかもしれません。
(大紀元日本ウェブ編集部)