米中貿易戦が長期化 経済学者「中国の供給網が崩壊」
5月10日に終了した米中閣僚級通商協議が実質上物別れに終わり、米中間の関税引き上げ応酬が始まった。
トランプ米政権は現地時間10日午前0時、2000億ドル(約21兆9196億円)相当の中国製品に対する制裁関税の引き上げを実施した。中国当局は13日、報復措置として、6月1日から約600億ドル(約6兆5759億円)相当の米国製品に課している関税を最大25%に引き上げると発表した。一方、米政府は13日、現在追加関税の対象から外れている3250億ドル(約35兆6193億円)相当の中国製品について、最大25%の関税を課す計画を表明した。
「中国供給網の崩壊」
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の経済学者、兪偉雄氏は大紀元に対して、米中貿易戦の激化に伴い、「短期的に米国内経済は株価相場の下落や金融市場の不安定がみられるものの、米国と比べて、中国経済がより大きな打撃を受ける」と指摘した。米中貿易の不均衡が最大の原因だという。
2018年、米国の対中輸出は1200億ドル(約13兆1517億円)だったのに対して、中国の対米輸出が5400億ドル(約59兆1828億円)に達した。中国当局が米国製品に追加関税を課しても、米国が受ける影響は限定的だとみられる。しかし、中国当局は、巨額な関税を徴収されるほかに、今まで米中貿易活動によってもたらされた、米企業の技術情報の入手、市場シェアの拡大などの恩恵も失うことになる。
兪氏は、米中貿易戦の激化で中国当局が直面する最も深刻な課題は、米中貿易戦の長期化に警戒する各国企業の中国撤退が加速化することだと指摘した。
「過去30~40年間、世界の工場と呼ばれた中国には世界各国企業の製造拠点が集中した。米中の関税合戦の激化によって、この供給網が崩壊の危機にある」
兪氏によると、現在中国で生産されている製品の大多数は輸出向けの商品だ。米政府の関税引き上げで、中国に進出するメーカーが持つ競争優位性が低下し、「台湾企業、韓国企業、日本企業、米国企業が今後自国、または東南アジア諸国に生産移管するのは、大きな流れになってくるだろう」と兪氏が述べた。
米中貿易戦が長期化する可能性が高いため、中国市場を対象にしていない各国の製造メーカーは「できるだけ早く中国から撤退した方が得策だ。中国より人件費が安い国や地域は、他にも多くあるからだ」。
時事通信14日付によると、日本企業の多くは中国以外の工場への生産移管を着手している。住友重機械工業は今年に入ってから部品供給網を変更した。
トランプ大統領「中国がひどい打撃を受ける」
トランプ米大統領は13日、米中貿易摩擦についてツイッターに4回投稿し、兪偉雄氏と同様の考えを示した。米中の関税引き上げ合戦で、「(国有企業に)助成金を給付する」中国が受ける影響は米国の5倍だとの見方を示した。中国当局に対して、早期の合意達成を促した。
「(米企業が)関税のかからない国から輸入したり、米国内で調達すれば、関税を回避することができる。ゼロ関税だ。関税を課された多くの企業は中国を去り、ベトナムと他のアジアの国に行くだろう。だから、中国(当局)は米国とすぐにも交渉したいのだ」
「中国と取引する者がいなくなる。中国にとっては大変なことだが、米国にとっては良いことだ。中国(当局)は長年米国から搾取してきた」
「習近平国家主席と中国のすべての友人に公言するが、中国が米国と合意しなければ、企業は中国を離れて他の国に移転せざるを得ないため、中国はひどい打撃を受けるだろう。素晴らしい合意がほぼ出来上がっていたが、中国(当局)が姿勢を後退させた」
中国経済見通し
また、兪偉雄氏は、今まで対米貿易黒字に頼って発展してきた中国経済の見通しについて悲観的な見方を示した。
「経済がさらに失速する一方で、債務規模は急拡大するだろう。中国の債務総額が対国内総生産(GDP)比が現在260%の水準に達したことは、中国経済が脆弱であることを表す。企業の債務不履行と銀行の不良債権の急増は中国経済にとって隠れた爆弾だ」
同氏は、国内の投資家に対して、中国当局の指示を受け政府系機関投資家が操る中国株式市場よりも、人民元相場の変化に着目した方がよいと話した。「元相場は国内外の企業と投資家により大きな影響を与える。現時点、元が対ドルで心理的な節目である1ドル=7元台を割り込むと元安・ドル高が急速に進むか否かが、中国経済情勢を見極める決め手だ」
トランプ大統領は13日、6月下旬、大阪で開催される予定の20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせて、中国の習近平国家主席と会談することを明らかにした。
(翻訳編集・張哲)