北朝鮮の新型ミサイル、中国航天科工が技術支援か=分析
北朝鮮は5月4日午前、北西部ウォンサンの実験場で、新たな核搭載可能固体燃料型短距離弾道ミサイルの発射実験を行った。
2017年以来、約2年半ぶりのミサイル発射実験だが、北朝鮮上部を超えて東に240キロ飛翔した。過去の実験と同様に、北朝鮮は即座に新型ミサイルの画像を公開した。
多数の専門家が、ロシアの短距離弾道ミサイル・イスカンデルと類似していると指摘する。ロシア支援のミサイル技術かと一見みえる。しかし、中国の航天科工集団のミサイルとも似ていることから、中国が売却したミサイル技術との可能性も拭いきれない。
中国国有企業で、宇宙開発の主要な生産団体である航天科工集団と、北朝鮮とのミサイル技術協力関係は10年以上に及ぶ。
2月8日の軍事パレードで、北朝鮮が新型短距離弾道ミサイルを初公開した。当時から、ロシアのイスカンデルに似ていると言われていた。5月4日、朝鮮中央通信が公表した画像では、ミサイルの先端部が双円錐形で特徴は類似している。
さらに、北朝鮮の新型ミサイルは、発射装置に固定するため、取り外し可能な金属製の留め具を採用している。これもイスカンデルによく似た方法だ。いっぽう、航天科工のCM−401対艦弾道ミサイルとも酷似している。中国のミサイルは、2018年11月の珠海航空ショーで初めて公開された。CM-401は、北朝鮮のミサイル同様に先端部が双円錐形で、輸出型は290キロメートルの射程距離といわれている。
北朝鮮のミサイルに類似した中国ミサイルは迎撃の困難なHGV
This is an exportable anti-ship ballistic missile, named CM-401, with a range of 290 km and a terminal velocity of Mach 4-6. It is alleged that the 055 will be armed with a similar but more powerful weapon (1000 km range instead). pic.twitter.com/BUFWM0HzAz
— BZhRK (@BZhRK1) November 3, 2018
珠海航空ショーでは同時に、CM-401発射装置2種も展示された。8輪の輸送搭載装置と、船舶型とみられている。詳細な公開情報はないが、専門家は、ミサイルは最大直径0.8メートルで、形状はイスカンデルに似ているが、少し小さい。
軍事情報サイト「ドライブ(The DRIVE)」によると、CM-401は対艦弾道ミサイルではなく、ブースターの燃焼が終了して落下後、さらに不規則な跳躍と滑空を続けて飛距離を伸ばす、極超音速滑空体(HGV)である可能性があると報じた。
同メディアによると、マッハ4~6で目標に向かうCM-401は、射程1000キロとも言われ、不規則な弾道の確認は困難だ。発射装置の画像を見ると、2発を標的にすることも可能と考えられる。ショーで展示されたHGVの弾道部分には、より確実に標的に着弾するよう、フェーズドアレイレーダーとみられるものが備えられている。
航天科工は2011年以来、北朝鮮の大陸間弾道ミサイルを載せた、大型の輸送起立発射装置(TEL)の主な供給元とされている。また、短距離弾道ミサイル用の固形燃料を、パキスタンや他の国へ輸出している。
北朝鮮は2017年4月の軍事パレードで、航天科工のTELに搭載した中距離および大陸間弾道ミサイルを、発射管に装着して展示した。航天科工が、北朝鮮に固体燃料もミサイル技術も供給した可能性を示している。
北朝鮮の新型ミサイルに対する海外からの支援が確認されるまでには、韓国や米国政府の発表を待たなければならない。しかし、航天科工と北朝鮮との長年にわたるミサイル技術協力や、CM-401との類似性から、中国が北朝鮮の軍事開発に加担している可能性は拭えない。
このたび5月4日の北朝鮮ミサイルの発射で使用されたTELは、MZKT-7930アストロログと非常によく似ている。ロシアは、第4世代対空ミサイルKM-SAM技術を韓国に販売したほか、韓国の玄武2号の開発技術に協力したと言われている。これらが事実なら、ロシアが北朝鮮に、イスカンデルの技術を売却したとも考えられる。
ロシアや中国が、北朝鮮の核兵器の搭載可能な短距離、中距離、大陸間弾道ミサイル開発を支援することは、米国の拡大された核安全保障に対する日本と韓国の信頼を損ない、日本および韓国、米国との同盟関係に亀裂を入れるという、両国の狙いに合致する。
リチャード D・フィッシャーJr. (Richard D.Fisher Jr.) 国際評価戦略センター(International Assessment and Strategy Center)主任研究員。当記事は、ニュースレターGeostrategy Directに掲載されたフィッシャー氏のレポートに基づく。