G20、米中首脳会談で貿易摩擦解消の期待感は薄い=専門家
アルゼンチンのブエノスアイレスで11月30日と12月1日に行われる世界政経主要国会議G20で、米中両首脳は12月1日に夕食会を予定している。貿易摩擦のほか、北朝鮮などいくつかの問題を議論する。専門家はこの会談で、世界経済に影響を及ぼす貿易戦は期待されるほどの動きはないと見ている。
ホワイトハウスは、中国の知的財産盗用や強制技術移転、国営企業の優遇支援や労働権利の侵害など、不公平な貿易条件を指摘してきた。トランプ大統領は、対中貿易には厳しい姿勢を貫く構えだ。
ブエノスアイレスに発つ前、大統領は記者団に対して「中国は取引したいと思っているだろう。私は取引にはオープンな姿勢だ。しかし正直、今のやり方が気に入っている」と述べた。大統領は、米国は対中関税という形で数十億ドルを得ていると語った。
ホワイトハウスは、米中首脳会談で何も合意がなければ、中国に対して新たな制裁関税を発動すると警告してきた。
米国は2018年、約2500億ドル(約27兆円)相当の中国製品に関税を課した。関税は2019年1月、現在の10%から25%に引き上げられる。さらに、問題解決に進展がなければ、さらに2670億ドル(約29兆円)の中国製品に関税を課す可能性がある。
専門家は、米中首脳会談で市場は大きな進展を期待していない。太平洋人生基金アドバイザーズ(Pacific Life Fund Advisers)の資産配分部門責任者マックス・ゴクマン氏は、「米中首脳の貿易交渉に対する市場反応は(情報の)非対称性から、プラスの動きはマイナスの動きに勝るだろう」「投資家はクリスマス前に貿易摩擦が終止符を打つとは考えていない」と述べた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は29日、米国と中国が来春まで追加関税の発動を停止した上で、「中国経済政策の大幅な変更を見据えた」新たな協議を行う方向で合意を探っていると伝えた。しかし、同紙が米中双方の関係筋の話として、G20首脳会議に合わせた米中会談で合意が得られるかは不透明だという。
トランプ米大統領は同日、中国との通商交渉妥結に近づいているものの、それを自分が望んでいるかは定かでないと述べた。
世界経済は暗雲の気配=IMF代表
国際通貨基金(IMF)のラガルド代表は、米国と中国の貿易摩擦や英国の欧州連合離脱といった不確実な要因を受けて、世界経済の成長は減速しているとG20前に見方を示した。首脳会議では議論される主要課題の一つと考えられる。
成長の勢いは米国は依然として強い。米中貿易戦の影響から、サプライチェーンは東南アジアに移行し地域経済は活況を迎えるとの予測もある。しかし「重大なリスクにより暗い雲が現れる時期にある」と国際通貨基金クリスティーナ・ラガルド代表は11月28日、自身のブログに書いた。ラガルド代表は、G20の首脳たち対して、経済危機を防ぐために迅速に行動する必要があると呼び掛けた。
IMFは最新報告で、2018年と2019年の世界経済は3.7%成長すると見込んだが、両年ともに0.2%ポイント下回ると予想を修正している。要因に、中国経済の成長鈍化、米中貿易戦、アルゼンチンやトルコなどの新興市場における金融懸念を挙げた。
G20は世界の経済大国の指導者たちが対話を交わし意思を確かめる主要な国際会議となっている。この20カ国で世界国内総生産(GDP)の85%、世界人口の3分の2、国際貿易の75%を占める。
開催国であるアルゼンチンは近年、経済問題に悩まされており、この大型国際会議開催のために約2年を費やして準備した。同国マウリシオ・マクリ大統領は、トランプ政権の米国と習近平政権の中国との間の貿易紛争を終わらせるため、個人的な役割を果たしたいと語る。
戦略国際問題研究所(CSIS)米国プログラムの上級顧問ミシェル・マテラ研究員は11月20日、CSISウェブサイトでG20の考察を示した。同氏は、マクリ大統領が「仲介役を担えるかどうかはわからないが、彼自身はその役割を果たしたいと望んでいる」と話した。
先進国の経済が上昇するなか米中の貿易摩擦が高まっていることから、アルゼンチンを含むいくつかの新興市場は外的圧力に揺さぶられ、不安定になっている。
「ラテンアメリカの多くの国々は、米国と中国のどちらかを最大貿易相手国にしている。このため、米中貿易戦争は、世界の成長にとって大きな脅威と見なされている」とマテラ氏は述べた。
トランプ大統領はマクリ大統領と30日に朝食ミーティングを開催する予定にしている。世界貿易と親中のマドゥロ政権ベネズエラが議題に上がる見通しである。
(翻訳編集・佐渡道世)