アングル:イタリア政治危機、再選挙後の想定シナリオ

[ローマ 29日 ロイター] – イタリア暫定首相に指名されたカルロ・コッタレッリ氏が暫定内閣の組閣でさえ主要政党の支持を取り付けられない中、早ければ7月29日にも再選挙が実施される可能性が出てきた。

再選挙とその後に想定されるシナリオを以下にいくつか挙げる。

●五つ星運動と同盟の連立

このシナリオを市場は最も恐れているだろう。大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右「同盟」が今月発表した共同政策案を受け、市場はすでに戦々恐々としている。そこには減税や福祉の強化に向けた財政出動と、2011年に国民の不興を買った年金改革の廃止が盛り込まれている。

マッタレッラ大統領が27日、両党が推すユーロ懐疑派の経済相候補の起用を拒否したことで両党は連立を断念した。

再選挙なら、両党は協力して選挙戦に臨むことを検討しており、彼らのいわゆる政権公約が将来的な連立の基盤となり得ることに変わりはないが、まだ決断していないことを明らかにしている。

調査会社SWGの世論調査によると、3月4日の総選挙以来、同盟は支持率を10ポイント以上伸ばしており、現在は27%を超えている。一方、五つ星運動は約3ポイント減の29.5%。両党が連立を組めば、議会で過半数を優に超える。

主な懸念は、再選挙が単一通貨ユーロの是非を問う国民投票になるかもしれないことだ。それどころか、マッタレッラ大統領がEU懐疑派の経済相起用を拒否したことを受け、EUの是非を問うことにもなりかねない。

●中道右派政権

3月の総選挙では、ベルルスコーニ元首相率いるフォルツァ・イタリアを含む中道右派連合の中で、同盟は最も人気の高い政党として頭角を現した。ベルルスコーニ氏は28日、保守連立は団結を維持すべきだと語った。

しかし同盟のサルビーニ党首は、まだ態度を明らかにしていない。中道右派の得票率は約40%に達すると最新の世論調査は示している。3月の選挙では37%だった。つまりそれは、中道右派連合は議会で過半数に達しない可能性が高いことを意味する。

世論調査によると、同盟を支持する票の大半はフォルツァ・イタリアから流れてきているようだ。フォルツァ・イタリアの支持率は3月以降、6ポイント下がっている。

市場や欧州の既存勢力にとって、中道右派連合はやや安心感がある。ベルルスコーニ氏は穏健な中道右派を標榜しているからだ。フォルツァ・イタリアは、地方でも国政でも同盟とたびたび手を組んでおり、同盟の急進的なスタンスをしばしば和らげている。

81歳のベルルスコーニ氏は3月の総選挙には出馬することができなかったが、次の選挙ではフォルツァ・イタリアから首相候補として出馬することが可能となるだろう。同氏は2013年、脱税の罪により公職に就くことを禁止されていたが、裁判所は今月それを解除した。

 

●民主党が五つ星運動またはフォルツァ・イタリアと連立

これは、現時点で最も可能性の低いシナリオである。

直近の各世論調査によると、中道左派の民主党(PD)の得票率は約20%で、3月の総選挙よりやや高い水準だ。五つ星運動と組めば、過半数を十分取れる可能性はある。

ただしPDは、3月の総選挙後に何度も連立の申し出を受けたが、それを拒否してきた。その立場に変化は今のところ見られない。

PDとフォルツァ・イタリアという右派と左派の連立は、過半数に遠く及ばないことを各世論調査は示している。PDは極右との連立を常に除外してきた。

●変数は何か

暫定内閣が議会で過半数を得る可能性は低いことから、五つ星運動と同盟は協力して新たな選挙法を成立させる可能性がある。現行法では、ほぼ完全な比例代表制で選挙が実施され、連立には有利に働く。

同盟のサルビーニ党首は28日、五つ星運動と選挙法を改正することを検討していると述べたが、どのように変えるかについては明かさなかった。再選挙を控え、いかなる改正も政治的な計算に影響を及ぼすことは明らかだ。

現行法の下では、同盟が3月選挙のときのように、中道右派連合と共に戦い、選挙後に五つ星運動と組むという独自路線を歩むことを妨げるものは何もない。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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