北朝鮮のミサイル発射失敗、市街地に着弾で被害か=昨年4月
北朝鮮が昨年発射した弾道ミサイルは、打ち上げに失敗して、同国の人口密集地に墜落し、被害をもたらしていた可能性がある。米外交オンライン誌「ディプロマット」が3日に報じた。北朝鮮当局や国営メディアはこの事故について明かしていない。
報道によると、北朝鮮当局は2017年4月28日、平壌の南にある北倉空軍基地から中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星12」を発射した。しかし打ち上げに失敗して、徳川(トンコン)市の工業・農業用の複合施設に着弾したという。
同紙は米国防総省の関係筋の話として、ミサイルは動力飛行の1分後に1段階エンジンに異常が発生し、最終的には高度70キロを超えなかったと伝えた。記事は、4月と5月の衛星画像を比較して、関係筋が明かした事故現場を示している。
火星12号は、北東に約39キロメートル飛行した。飛行が成功すれば、日本海北部に落ちるように設定されていた可能性がある。
「ティプロマット」によると、火星12号は液体燃料ミサイルで、推進剤と酸化剤を組み合わせて(2つの物質が接触すれば発火する仕組み)燃焼させる。そのため、失敗すれば大規模な爆発を引き起こす恐れがある。
北朝鮮は同年5月、8月、9月に火星12号をそれぞれ発射した。夏の2回は日本列島上空を通過した。同紙は、列島越えを狙っていても、失敗すれば日本に被害をもたらす軌道であり「北東アジアに深刻な危機となる恐れがある」と警告した。
衛生写真を見ると、事故現場は市街地から遠くないことが分かる。使用される液体燃料は発がん性物質であり、人体への影響が懸念されている。米ジェームズ・マーティン不拡散研究センターの核・ミサイル専門家、ジェフリー・ルイス博士は昨年9月、北朝鮮のミサイル用液体燃料は国内製の「UDMH(非対称ジメチルヒドラジン)」である可能性があると分析。アンモニア臭がする無色透明の液体で、空気に触れるとすぐ発煙するほど燃焼力が高く、日本の法律では要厳重管理の「劇物」に指定されている。
「体に付着すると皮膚がただれ、大やけどを負う。ガスの状態で吸い込むと肺水腫(肺に水がたまり、呼吸不全に陥る)を発症する危険がある」と軍事ジャーナリストの世良光弘氏は過去、日本の週刊誌の取材に応えている。
20年前、中国のロケット発射の失敗ではUDMHによる爆発で、500人近くの民間人が死亡したと欧米メディアは報道した。1996年、中国・四川省で打ち上げられた「長征3号B」は発射に失敗し墜落、爆発した。当局は死者50数人と発表している。英ディスカバリーチャンネルの取材では、墜落現場近くは街一帯が爆発の衝撃で何棟もの建物が大破した様子が映っている。中国当局は事故直後、周辺をすぐさま封鎖し、事故の隠ぺいを図ったという。
北朝鮮による今回のミサイル墜落事故で、人的被害があったあどうかを見極めるのは不可能に近い。しかし、報じられた衛星写真には、破損したとみられる建物の屋根や、一部施設が消滅した様子が映っている。
(翻訳編集・佐渡道世)