日中関係が改善の兆し 人民日報の記事にも変化
安倍晋三首相はこのほど、東南アジア諸国訪問で、中国の習近平国家主席と李克強首相とそれぞれ長時間の首脳会談を行った。日中両国の国交正常化以降、異例な対応となった。中国共産党機関紙・人民日報もこのほど、習主席と安倍首相が微笑みながら握手している写真を掲載し、習近平政権が日中関係改善に前向きな姿勢を示唆した。
ベトナムで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席した安倍首相と習主席は11日、約45分間の首脳会談を行い、日中関係の改善を進めていくことで意見が一致した。
安倍首相は、2018年に中国訪問の意向を示し、また習主席の早期訪日を要請した。また首相は、日本が議長国を務める日中韓首脳会談の早期開催を希望していると、習主席に伝えた。
ベトナムでの日程を終えた安倍首相は13日、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に出席するため、次の訪問国フィリピンに到着した。
同じくASEAN首脳会議に参加した中国の李克強首相と安倍首相も約1時間の首脳会談を行った。会談中、李克強首相は「日中両国の関係に積極的な変化がみられた。今後もさらに、関係改善の勢いを強化する必要がある」と述べた。
党の方針や政策を色濃く反映する人民日報の報道にも大きな変化がみられた。人民日報はこれまで日中首脳会談を報道した際、日本の国旗が入っている写真、または両首脳が握手する写真を掲載したことがない。
両首脳は7月8日、ドイツ・ハンブルクで開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20)に参加した際、首脳会談も行った。人民日報は当時の報道で、握手のない両首脳や両国政府高官との会議の様子を映した写真を使った。しかし、12日の報道では異例にも安倍首相と習主席が握手する写真を掲載した。
また、写真の中で習主席が微笑んでいることも興味深い。14年北京で開催されたAPEC首脳会議に出席した際も、日中首脳会談を行ったが、習近平氏は終始硬い表情で笑顔がみられなかった。
当時、海外の中国政治問題の専門家は、習主席が国内の民族感情や、党内の反対派閥に配慮して、安倍首相に対して終始無表情で対応した可能性が高いと、分析した。
習近平国家主席は10月25日に閉幕した党大会で自らの名前を冠した「習思想」を党規約に盛り込ませることに成功した。また、習主席は反腐敗運動を通じて党内の数多くの反対勢力を排除したことで、一段と権力集中が進み、「党核心」の地位を確立した。2期目の任期に入った習主席にとっては今後国内政治情勢や党内の権力闘争よりも、アジア諸国との関係修復を含む外交問題を優先すると推測される。
一方、マカオ大学の王建偉教授は14日、米ボイス・オブ・アメリカの時事番組において、「日中両国は南シナ海や尖閣諸島などの問題で意見が対立しているため、直ちに関係が改善して友好ムードが広がるのは難しい」との見方を示した。
中国国家主席が最後に来日したのは2008年だ。当時の胡錦涛国家主席は同年5月6~10日までの日程で、日本の政界・経済界と交流した。
(翻訳編集・張哲)