明朝滅亡の再来か (Getty Images)

国営メディアに「明朝滅亡の危機」掲載 共産党滅亡のシグナルか

中国国営メディアに非常に意味深な記事が掲載された。「明朝滅亡の危機にさらされているというのに、兵士は無給、皇族高官は財布の紐を緩めない。朝廷の文武百官は、そろいもそろって無能を装い、ついに偉大なる明朝が滅亡を迎えた」といった内容だが、国営メディアがこの種の報道をすること自体、極めて異例のことだ。だがこれより前にも、当局の指導者層から幾度となく「腐敗による党の滅亡」の警告が発せられている。

5月7日、人民日報海外ネット版の微信(ウィーチャット)のユーザー「侠客島」が「学習時報」に掲載されている一文を転載した。タイトルは「偉大なる明朝が滅亡の危機にある。しかし官僚たちは無能を装っている」。「学習時報」とは各級の党幹部や知識人を対象として国内外に公開発行されている全党で唯一の学習専門紙。

「偉大なる明朝が滅亡の危機にある。しかし官僚たちは無能を装っている」

文中には、明朝滅亡時の様子がこのように記されている。

「1644年3月18日、李自成により北京は陥落し、明朝最後の皇帝、崇禎帝が自殺したことで、約280年続いた明朝は滅亡した。崇禎帝は最後まで国を守るために力を尽くした。皇帝としての誇りもかなぐり捨てて、都北京を守る兵士たちに給料を支給するため、皇族や高官らに寄付を懇願した。しかしそれは徒労に終わった。皇帝一族はみな金を出し渋り、大臣たちはみな無能を装い、のらりくらりとそれをかわしたからだという」

文中ではその時の腐敗官僚の様子がこのように描かれている。

「内閣首輔(大臣)魏藻徳の寄付金は500両。最も金持ちの宦官王之心は1万両を寄付した。実は皇帝は1人3万両以上を望んでいた。だが3万両も寄付したものは誰もいなかった。最高でも2万両で、大多数は数百から数十両でお茶を濁した。高官の多くはそんな大金は持っていないと不満を言ったり、生活が苦しいと泣き落としをしたり、逃げ隠れしたりした。あるものは(お金がないことを装うために)自宅の鍋釜を大通りに並べ、露天商を始めた。またあるものは、屋敷の入り口に「売り物件 至急」と書いた紙を貼った」皇族や高官たちが、寄付金の拠出を免れようとあらゆる手を講じ、大騒ぎしたことが見て取れる。

その結果、集まった寄付金の総額は20万両だった。皇族や高官らが賄賂で私腹を肥やしていることは、皇帝も重々承知していた。そこで皇帝は彼らに対し、幾度となく国家民族の大義を諭したが、それでも高官たちは身銭を切ることを嫌がった。皇帝は尊い天子であったが、なすすべがなかった。

崇禎帝は帝位を継いだ時から乱れきった王朝を建て直す必要に迫られていた。食べ物や衣類を倹約し、女官の数も足りないほどだった。宮中にあった金銀の食器や、本殿の銅の壺に至るまであらゆるものを手放し、兵士の給料に充てた。史料には、皇帝は宮中に蓄えられていた高麗ニンジンなどまで売り払ったと記されている。

 

文末には、皇帝の前では自分の窮乏を切々と訴えた「鉄公鶏(「ケチ」の意味)」たちが、北京陥落の後、李自成軍に対し次々と莫大な財産を拠出したことが記されている。史料には、李自成軍が残酷な拷問を行って銀7000万両を手に入れたとあるが、崇禎帝の岳父にあたる周奎は、李自成軍に対し、数十台もの荷車に曳かせるほどの数え切れない財宝を差し出したという。そのうち、銀(当時の貨幣)だけでも53万両以上あったと記録されている。国の大事を説き、寄付を懇願する崇禎帝の面前では、大げさに泣き叫んでわずか銀1万両をやっとのことで差し出したという守銭奴だったのだが。

中国共産党の終焉を暗示するシグナルを発しているのか

時事評論家の李林氏は、この一文が党の機関紙に発表されたことに、ある意味が込められていると分析している。現在、共産党員の汚職は社会の隅々まで蔓延してしまったため、汚職腐敗に手を染めていない党員など存在せず、汚職の酷さは庶民の想像をはるかに超えている。今この時に国営メディアが明朝末期の腐敗官僚を批判し、王朝滅亡の歴史に触れることにより、歴史にことよせて、中国共産党の終焉を暗示するシグナルを発しているのではないかと推測しているという。

(翻訳編集・桜井信一/単馨)

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