見て見ぬふりは無知より罪 日本は臓器濫用問題に真摯に取り組みを=ノーベル平和賞候補者
神奈川県逗子市で6月、来日した、中国の臓器濫用問題の調査の第一人者でノーベル平和賞候補者の人権弁護士デービッド・マタス氏が市内で同問題について解説した。マタス氏は、第二次世界大戦時にナチス・ドイツの迫害から逃れてきた難民を救うために尽力した外交官・杉原千畝氏を挙げて、「世界から称えられる最良の例」と称えた。同じく大量虐殺が疑われる中国「臓器狩り」について、日本が法整備や問題認知を高めるなど、問題に真摯に取り組むようにと語った。
逗子市では、現在、中国政府による法輪功愛好者への迫害と違法臓器収奪を即刻停止するよう求める意見書案が作成されている。意見書は6月23日に議会に提出される予定。
隣の鎌倉市では、日本で初めて、法輪功の迫害と臓器濫用問題を含む、少数民族や人権活動家などに対する中国共産党による人権侵害について、日本政府と国会が国際社会と連携して改善に向けて行動するよう強く求める意見書が、2016年に鎌倉市議会で可決した。
この鎌倉市には、第二次世界大戦時に、リトアニア駐在領事として避難民の救助に尽くした「東洋のシンドラー」と称される杉原千畝氏の墓がある。ユダヤ系カナダ人であるマタス氏は「杉原氏の行動は、日本人で大量虐殺に立ち向かった人物として、世界から称えられる素晴らしい例」と述べた。
杉原氏は、ナチス・ドイツの迫害対象だった多くのユダヤ系避難民を、オランダ領などに渡れるように、6000件もの通過ビザを日本政府の許可なしに発給した。これについて、杉原氏の夫人で杉原幸子氏著 『六千人の命のビザ』 (大正出版、1993年)によると、杉原氏は苦悩の末、外務省の指示に反するものの「人道上、どうしても拒否できなかった」という。
マタス氏は、中国臓器濫用問題に対応する日本の議会での例として「鎌倉、逗子で行われていることが素晴らしいこと」とし、臓器狩りの直接の解決は「中国人が行うこと。その外側にいる人は、共犯にならないようにするべきだ」とした。
2016年6月13日、米国下院議会は 「中華人民共和国の政府と中国共産党による、17年にわたる法輪功への迫害を即刻停止し、法輪功愛好者やその他の全ての良心の囚人を直ちに釈放することを要求する」という条項を含む決議を採択した。欧州議会では2013年12月、同様の決議案が通過している。イスラエル、スペイン、イタリア、台湾では移植ツーリズムを取り締まる法規が制定されている。
マタス氏は、臓器狩りについての調査報告者を2006年に発表してから、すでに10年以上たつものの、日本で問題停止の動きが目立って現れていないことについて「見ぬふりは無知より罪だ」と厳しく指摘。「日本人それぞれが問題の認識を高め、医師らは医療倫理を改善し、立法機関は移植ツアーについての法整備を行うことだ」とマタス氏は助言した。
(文・佐渡道世)