豪保安情報機構(ASIO)は一連の献金事件が政治介入を企む中国政府の主導のもとで行われた、との見方を示した。写真はオーストラリアの国会議事堂。(大紀元)

主要二政党、中国系実業家から巨額献金 豪で警戒論

   在豪中国人実業家らによる与野党への巨額献金事件がいま、オーストラリア国内で議論を巻き起こしている。オーストラリア放送協会(ABC)などの大手メディアがこのほど、一連の献金事件が政治介入を企む中国政府の主導のもとで行われたと豪保安情報機構(ASIO)の見方として報じた。こうしたなか、ターンブル首相はスパイ活動や内政干渉を防止する関連法案の見直しを表明した。

6月初めに放送された同番組は、ABCと大手メディア「フェアファックス」が合同で製作したもの。

それによると、巨額献金者の1人は、中国中央組織の全国人民政治協商会議の元委員、豪州の国籍を取得した周澤栄氏。もう1人、永住権をもつ黄向墨氏は、中国共産党中央統一戦線工作部が支配する在外華僑団体にあたる「中豪平和統一促進会」の会長で、現在帰化申請中だが、手続きはASIOに止められた。

2人は「中国共産党と不透明で深い関係をもっている」とされている。ASIOは、2015年に主要政党の首脳部に対し、2人の献金総額が670万豪ドル(1豪ドルは約86円)に達したことを報告し、「献金は条件付きの可能性がある」と注意を促したものの、その後も2人から、与党の保守連合が90万豪ドル、野党の労働党が20万豪ドルとそれぞれ受け取った。

2016年総選挙の直前、黄氏は第二政党の労働党に40万豪ドルを供与する意向を示したが、同党幹部が南シナ海での中国の海洋進出を批判したとして献金を取りやめた。ABCの番組はこの出来事に注目し、「中国人の利益を守るため、政治に意見を申すべき」という黄氏のかつての発言から、その献金の動機に疑問を呈した。

ロブ前貿易相と黄氏らの関係も問題視された。黄氏から10万豪ドルの献金を受けた当時のロブ貿易相が翌2015年、10年間進展のなかった豪中自由貿易協定(FTA)に調印するなど、豪中関係の強化に積極的だった。ロブ氏は議員辞職直後、2016年7月に中国企業「嵐橋グループ」から顧問料として年間88万豪ドルが支払われた。一方、中国軍部の企業とされる同グループは2015年、米海兵隊が駐留する豪北部準州ダーウィン港の商業施設を99年間借りる契約を交わした。当時のオバマ政権が豪政府に抗議し、中国は両国海軍の活動を監視する格好の場所を確保したなど、両国政府関係者の間で懸念の声が高まっていた。

報道を受け、ブランディス司法長官はABCとフェアファックスの共同取材に対し、「外国の政治干渉が国家の主権、国民の安全、経済及び民主主義に悪影響をもたらしている」と述べ、ターンブル首相の指示により、今年末までにスパイ法、内政不干渉の関連法案を見直すための検討に入ったと明かした。

 (翻訳編集・叶清)

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