北朝鮮の相次ぐミサイル挑発 韓国新政権「対話の時期ではない」と政策転換か
北朝鮮は29日早朝、スカッド-Cと推定される弾道ミサイルを発射した。 文在寅(ムン・ジェイン)政府の発足後、4回目になるミサイル挑発となる。多種にわたる弾道ミサイルの能力を対外に示し、さらに国際社会の対北朝鮮政策の転換を迫る、北朝鮮指導部の意図との見方がある。これにより、北朝鮮との対話と経済協力を掲げる文政権の軍事的、外交的対応も難航する見通しだ。
連続するミサイル実験 北朝鮮の挑発の意図は?
韓国の専門家らは、北朝鮮の挑発の意図を大きく3つに分けて分析する。
1.独自のロードマップによる軍事力の誇示
北朝鮮は今年2月の準中距離ミサイル「北極星2号」から、今回発射した短距離ミサイル「スカッド-C」まで、様々な射程距離の弾道ミサイル発射試験を行った。現代化、多様化した弾道ミサイル能力を誇示し、地対空ミサイル(SAM)から大陸間弾道ミサイル(ICBM)に次ぐ中距離弾道ミサイル(IRBM)を生産・保有する「軍事科学技術強国」を強調するのが狙いとみられている。
韓国内の専門家らは、北朝鮮の次のミサイル実験は、対艦弾道ミサイル(ASBM)だと予測する。実戦配置される場合には、有事の際に米海軍の軍艦と海上輸送運搬艦を狙うことが可能になる。さらに、相次ぐミサイル実験の最終目標を「核弾頭運搬体の開発」と指摘する。キム・ジュファン聯合ニュース記者は「北朝鮮は中国が核兵器とICBMを開発した過程を、そのまま模しているようだ」と分析した。
2.金正恩委員長の政治的結束力を強化するため
北朝鮮の朝鮮中央通信は30日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が参観した中で、新たに開発した弾道ミサイルの試験発射を進めたと報じ、金委員長の「指導力」の下で各種戦略兵器を備えたと宣伝した。新兵器の露出により、政治的な内部結束力の強化を狙ったものとみられる。
3.米韓との交渉に優位にさせるため
北朝鮮は、中低度の挑発を続けて独自の核・ミサイル開発を図り、想定しうる文政権との会話に先立って、軍事力を最大限に引き上げようという意図もみられる。これは文政府の特使外交と国際社会の対北圧迫を批判し、さらに6月末に予定された米韓首脳会談などを控え、交渉で主導権を握るためと解釈できる。
ノ・ジェチョン韓国合同参謀本部室長は29日、韓国国防部の定例会見で、「今回の北朝鮮の弾道ミサイル発射は、国際社会の制裁・圧迫にもかかわらず、北朝鮮の核・ミサイル能力を見せつけ、韓国政府の対北政策の転換を圧迫しようとする意図と分析している」と述べた。
文大統領、しばらくは対北制裁と圧迫、究極的には交渉を主張
青瓦台(韓国大統領府)は30日、文在寅大統領と安倍晋三首相が電話し、北朝鮮の核問題の解決について意見を共有したと述べた。安倍首相は北朝鮮の29日のミサイル発射について「国際社会への挑戦であり、決して容認できない」と相次ぐミサイル挑発を強く糾弾。中国の経済、アメリカの軍事圧力を強調し、「対話」を主張してきた文政府の対北朝鮮政策を指摘した。
文大統領はこれに対して「首相の話通り、北朝鮮と対話する時期ではなく、制裁と圧力を高めなければならない時だという点に認識を共にする」と語り、国際社会の協力を強化する必要性に共感する一方、「制裁と圧力の究極の目標は、完全な核廃棄のための交渉のテーブルに北朝鮮を引き入れることでなければならない」と強調し、制裁と圧迫は会話を伴った交渉のための手段という意見を強固にした。
文大統領は引き続き、「国際社会は一方では強く対応し、一方では北朝鮮が核開発を放棄する場合に対話が可能であるメッセージを継続的に伝えなければならない」と主張した。
(翻訳編集・齊潤)