第26回国際移植大会が行われた香港会議展覧センターの内部(大紀元)
臓器狩り

国際移植大会 中国医師団「臓器狩り」もみ消し図る

臓器移植という生命をつなぐ医療が話し合われる国際会議に、「人道犯罪者の参加」という不信感が残る内容だった。第26回国際移植学会(TTS)大会が香港で開催されたが、臓器の強制摘出問題で非難されている中国が参加した。さらに、前日にはTTS現議長と前議長が参加した、中国移植医療関係者向けの限定会議が行われた。中国の医師団は「臓器狩り」のもみ消しを図ったとみられている。

 TTS開催前 中国主体の限定会議 国際非難かわすためか

19日から23日に開催されたTTSに、中国が参加することは、開催前から人権団体や医学界から非難の声が上がっていた。中国の臓器移植は、ドナーや臓器の出所が不明で、多くは「良心の囚人」とされる刑務所の収容者であるとされているためだ。

限定会議は、中国政府機構の「中国臓器移植発展基金会」「中国人臓器配分や共用機構」が開催した。

この限定会議の議長は、国際移植学会の前会長チャップマン氏(Jeremy Chapman)が務めた。国際移植学会会長のオコーネル氏(Philip O’Connell)や中国の元衛生部副部長の黃潔夫氏が開式の辞を述べた。

会議のなかで、中国の医師たちは「中国共産党が臓器移植システムを改革した」と宣伝した。

 TTS会長と前会長、中国移植会と密接な関係か

TTSの元会長チャップマン氏と現会長オコーネル氏については、最近になって、2人が過去数年間に渡り中国本土の臓器移植センターと密接な協力関係にあったことが明らかになった。

オーストラリアSBSの報道によると、2人は、「中国の臓器は出所の大半が収容者」という時期に、医師団を中国へ連れて手術を行ったといわれている。

国際的な会議にもかかわらず、限定会議の参加者の多くは中国人で、本土の標準語で交流し、スマートフォン等で記念撮影をしていた。

また、参加者が大紀元に明かした話では、会議は「取材なし」とされたが、会場内には10人の記者がいて、ビデオカメラだけでも7、8台はあった。

参加したメディアは中国官製メディアとみられる。会議終了まもなくして、中国共産党の代弁者である「文匯報(ぶんわいほう)」と「大公報(だいこうほう)」は、「中国の臓器移植が国際的に注目を浴びてういる」「臓器移植の技術は先進的」などと宣伝した。

 講演前に中国医師みな宣言「臓器は死刑囚のではない」

参加者の話によると、19日以降の本会議では、中国医師が全員、講演を行う前に必ず次のような宣誓をしていたという。

「報告書にあるすべての資料(臓器)は、死刑囚の臓器を含めない。世界保健機関の指示、そして臓器移植協会の倫理に関する声明に従う」。

あらためて、収容者の臓器利用を否認していることをアピールした。いっぽうで、中国の移植臓器の詳しい出所について、中国側はいまだ明らかにしていない。

 

限定会議について、人権団体「法輪功迫害を追跡調査する国際組織」(追査国際)の米代表でハーバード大学医学研究員・汪志遠氏は、中国共産党は国際会議に便乗して好意的なニュースを報道し、中国共産党の「臓器狩り」をもみ消そうとしていると分析する。

臓器狩りの嫌疑があるため「国際追査組織」により調査対象とされている中華医学会臓器移植分会次期主席の石炳毅氏(大紀元)

 質問に顔色を変える黃潔夫氏

 移植専門医である黃潔夫氏は、中国共産党衛生部副部長を12年務めた。中国の移植手術件数は、黄氏の就任後に急増している。黄氏は、収容者からの臓器の強制摘出を推進したとして、人道に対する罪と医学倫理の違反を問われている。

法輪功の迫害の責任を問う団体「追査国際」は、TTSに参加した53人の中国人医師を、人道犯罪をおかしたとして、捜査対象にしている。また、人権団体「臓器の強制摘出に反対する医師」(DAFOH)は今年7月には黃潔夫氏に対する招待を撤回するよう呼びかけていた。

臓器強制摘出に関与した疑いが強く持たれている黃潔夫氏(大紀元)

会議後、黃氏が会場を出ようとしたとき、大紀元記者が「法輪功学習者から臓器を強制摘出した疑いがかけられていることをどのように見ていますか」と問いかけた。それまで満面の笑みを浮かべていた黃氏は、急に顔色を変え、無言のまま立ち去った。

香港「肝臓移植の父」と呼ばれる範上達氏は、今回の香港TTS議長を務めた。会場外で範氏に、53人の中国本土の医師が、「臓器を強制摘出」していると疑われていることについて質問したが、範氏は驚いた表情を見せたものの、一言も発さず、速足で会場を後にした。

記者にコメントを求められ、驚愕した表情を見せた範上達氏(大紀元)

 多くの中国医師 人権団体の調査対象に

臓器の強制摘出について、黃潔夫氏のみならず、ほかの参加した医師も嫌疑がかけられている。鄭樹林氏は浙江大学付属第一病院の院長であり、同時に法輪功を弾圧する組織「浙江省反X教協会」副理事長も兼任。石炳毅氏は「全国腎臓移植研究チーム」のリーダーと中国人民解放軍第309医院全軍移植研究所所長を兼任している。

講演者の一人、湘雅三医院副院長葉啓発氏は彼らと密接な関係を持っている。

追査国際の汪志遠氏は国際社会に注目と香港人に呼びかけた。「中国共産党は一方で臓器狩りという罪悪を香港まで拡大し、外国への窓口である香港を、その犯罪行為に利用しようと画策している。中国共産党はその魔の手を香港まで伸ばそうとしているが、このことは香港の社会と学術界にとって大きな打撃であり、民主主義に対する根本的な挑戦だ」。

中国共産党の臓器狩りを分析する汪志遠氏(大紀元)

(翻訳・文亮/揚思)

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