共産主義の挙国一致体制の犠牲者

元オリンピック選抜選手 貧困に苦しむも権力と金銭に屈せず

かつて飛び込み競技のアジアチャンピオンだった唐穎さん。彼女は現役時代に輝かしい成績を残しながらも引退後は経済的に困窮してしまった。幾度となく権力者や資産家に愛人になるよう言い寄られても彼女は動じず、権力と金銭の誘惑に負けまいと露店を経営して生活する。これはあくまで一例である。彼女と同じような境遇、いや、更に悲惨的な状況にいる選手もいるのだ。共産主義国家の輝かしいメダルの背後には、数え切れない犠牲者がいることを忘れてはならない。

 チャンピオンを待ち受ける引退後の苦しい生活

唐穎(とうえい)さんは飛び込み競技でアジアチャンピオンの座に輝いた経歴の持ち主だ。しかし彼女は引退後、生活に苦しむようになった。彼女の同輩たちが金持ちの愛人になっていても、彼女は金銭の誘惑に屈することはなかった。

中国のメディアによると、唐さんは選手として最適の人材であったという。12歳ですでに身長1メートル72センチの彼女は市の体育委員会に見込まれ、選手としての競技生活を始めた。その後の数年間は、彼女にとって練習と試合の日々となった。彼女は全国選手権で優勝し、全国運動大会(日本における国民体育大会)で優勝、アジア選手権大会でも優勝など、輝かしい戦績を残した。

2004年のアテネ五輪中国国内予選に参加した唐さんは優秀な成績を残せず代表選手として選ばれなかった。もしオリンピックに参加できたのなら彼女の人生はより良いものとなっていただろう。引退した彼女にはたった数万元の補償金が一次的に与えられた。

青春を飛び込み競技にささげた彼女にとって引退後の生活は慣れないことばかりであった。とくに就職において彼女は大変な思いをした。かつて飛び込み競技の選手だった唐さんは美しい体型のみならず容貌も優れていた。そのため権力者や金持ちに目を付けられた。

彼女はまず教育委員会に頼んで地元で教師をしようと思った。しかしそこでは委員長とダンスをするよう強要された。次に人事局に行き仕事を得ようとしたが、一人の官僚に愛人にならないと仕事を与えない、と告げられた。また、金持ちの男に一年に10万元を払って養うと言われたこともあった。唐さんはこれらの誘いを断固として拒否した。

彼女の仕事面での苦労を、かつての競技仲間は嘲笑った。しかしそれでも彼女は動じず、自らの力で生活していくと決めた。彼女はアパレルショップで働いた。月収はたったの800元だった。副業として屋台で人形を売ったこともあった。他の選手が権力者の愛人になったと知ると、「愛人として暮らしたい人もいるだろうけど、私はアルバイトをしても愛人はいやだ」と唐さんは言ったという。

 

 中国共産党の挙国一致体制 引退選手のうち安泰なのは三分の一未満

「武漢晩報」2012年7月の報道によると、中国本土で登録されている専業選手は約五万人である。毎年引退する選手は約3000人、その内のおよそ40%は引退すると失業である。満足のいく待遇を得るのはたったの千人程度。その他の選手は一次的な補償金を貰うだけ。

報道によると、中国では引退後の職業訓練がまるでないため、引退後の選手は失業し貧困に陥る。引退後の職業訓練とは選手の現役時代もしくは引退後に国家が資金を投入し、選手に就職できるスキルを教えるものである。

ここ数年、有名な選手が引退後に生活に苦しむケースが多々見られるようになった。中国青少年ウェイトリフティング女子の部で優勝歴のある黄燕蘭選手はその一例である。2005年、当時23歳だった彼女は練習中の負傷により後遺症が残った。しかし彼女はたった4千元の補償金と4万元の「引退金」しかもらえず、それ以降医療面などの福祉保障はいっさいなかった。

オリンピック選手は国際大会でメダルを勝ち得るスターであり人々の注目の的であるが、彼らの苦痛も知られざるものである。「北京晨報」によると、中国には引退した選手が約30万人いるが、そのおよそ80%が失業や障害、そして貧困に苦しんでいるという。

中国のオリンピック選手は著しいピラミッド型であるためその頂点に上ることができるのはほんの一握りだけ。多くの選手は土台部分でもがき、引退する。選手教育学校の同期数百人のうちメダルを獲得できるのは数人といったところだろう。そこまで大きな戦績がなく文化水準が低い選手にとって、引退すなわち失業という図式を免れることはない。

就職難以外で選手たちを苦しめるのは後遺症と病である。中国共産党のメダル戦略により非科学的な訓練が行われたり、過度に負荷を強いる訓練スケジュールを組まれたりする。一部の中国選手の訓練時間は外国選手と比べて極端に長いことも、選手が負傷するリスクを高め引退を早める重要な一因となっている。

大会で優秀な戦績を残した選手は注目の的となり、うらやましがられるもの。しかし彼ら・彼女らの引退後の生活については、その苦痛を知るものは少ない。

かつて中国ナショナルチームの医療事務に35年間携わったある関係者は、中国共産党関係者の強要による大量の中国選手のドーピングを目撃したと証言している。この関係者は最近再び海外メディアに対し中国選手がドーピングを強要されているという真実を明かし、国際社会の人道的な支援を要求している。中国共産党はここ数十年にわたり行ってきた挙国体制とメダル至上戦略により少数の精鋭選手を育成するとともに、多数の選手を切り捨ててきた。いわば体育における国家の独占状態が続いたと言える。選手は国家資金で育成され、大会で勝ち得た勝利と名誉は「共産党の名誉」となる。その陰では、選手の自由な人格と権利は奪われ、スポーツの自由で公正な気風が失われてしまった。

(翻訳・文亮)

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