(NARINDER NANU/AFP/Getty Images)

「人は輪廻するから時間がたくさんある」インド人のポジティブな時間の感覚

インド人と約束した場合、インド人に「30分あれば、約束の場所に着きます」と言われたら、信じないほうが良いのです。インド人の時間概念は「自己流」で、時間感覚は全世界のどこ国の人とも違うからです。インドにいる外国人、特に「時は金なり」を座右の銘にしている外国人は、最も悩んでいるのがインド人の時間感覚のことなのです。アレックスは全世界TOP10の紡織機部品製造・販売会社のインド支社の代表として、毎週インドの各都市を飛び回り、販売業者に会ったり、その販売業者と一緒に取引先を訪問しています。

アレックスはある日、販売業者のアジャンタと朝9時に会う約束をしていました。「すみません、15分後に着きます。少しお待ちください」とアジャンタから連絡がきましたが、2時間過ぎてもアジャンタは現れませんでした。その後「一時間後、絶対に着きますよ。心配しないでください」とまた連絡が来ました。しかし、最終的にアジャンタは現れませんでした。その後、不思議なことにそのアジャンタは色々な理由をつけながらも、次回に会う時間の約束を忘れませんでした。

翌日、アレックスはまた、一日中待っていましたが、やはりアジャンタは姿を見せませんでした。アレックスは「私は明日の夕方、違う都市に移動しますよ」と、電話で伝えると、アジャンタはやっと、「明日の午前、車で迎えに行きます。車の中で仕事の話をしてから、一緒に取引先を訪問しに行きましょう。絶対失望させません」と申し訳無さそうに返事しました。翌日、アジャンタはやはり遅刻しましたが、ようやく姿を現しました。それからアレックスはアジャンタと一緒に、会う約束をしていた取引先の人に会いに行きました。今度は、その人が約束の時間に現れませんでした。

もう一つ例を上げましょう。インドに住んでいる外国人は水道、トイレ、電気など、日常生活でトラブルに遭遇したとき、修理業者を待つために、外出する予定をキャンセルしなければなりません。なぜなら、修理業者を3、4日待たないといけないからです。もし、修理業者がなかなか現れないとき、どうすれば良いのかというと、修理業者に「業者を変える」と脅すか、本当に業者を変えるか、のどちらかしかないです。

「私は本当に理解できません。修理業者は早く来て修理を終えれば、すぐに報酬を受け取れるでしょう。なぜなかなか来ないのですか」と文句をいう外国人がいたら、恐らくインドに来たばかりの人でしょう。すでにインドである程度生活している外国人なら、その文句を言わないか、もう諦めているかのどちらかです。

 

では外国の会社がインド支社を作った場合、従業員の遅刻を許すのでしょうか。やはり従業員を管理しないといけないので、遅刻対策を考えなければならないのです。インド支社で6年間仕事した管理者は苦笑しながら、「インド支社の出勤時間は本社の出勤時間より1時間遅く、その代わりに退勤時間も1時間延ばしています」と対応策を話しました。この管理者はまた、「遅刻した従業員に対して、必ず規定に基づいて処罰しなければなりません。あまりにひどい者は解雇するしかないのです。そうしないと、インドの従業員の管理はとても難しくなります」と困ったように話しました。

それでは公的な企業や政府機関はどうでしょうか?政府機関はさすがに時間には厳しいのでは…と思いますか?違います。インドに駐在したことがある外交官はみんな、経験したことがあるでしょう。外交官として、インド政府機関を訪問したときや大型の国際シンポジウムに出席したとき、重要な官員が遅刻したため、1・2時間待たされるか、延期される、という話はよくあります。

インドでは『神は人が絶えず輪廻する過程を通して、やるべきことを一つ一つやり遂げてほしい。そのために人は輪廻転生をするのだ』と考えられています。インド人は輪廻転生を信じており、人は輪廻するから時間がたくさんあると考えます。そうすると、今回の人生でやることを全部やり終えなくても良い。ゆっくりと人生を味わうほうが良い。長い輪廻の旅の中で、数時間、数日のことを、気にする必要がないと考えているのです。

もしインド人と約束するとき、「インド時間の約束」なのか、あるいは「国際標準時間の約束」なのか、はっきりさせたほうが良いでしょう。約束する側はインド人の時間概念にイライラすることもありますが、現代の人は毎日忙しくストレスもいっぱい。インド人の時間に対する考え方も学んだほうが良いかもしれません。そうすれば、穏やかな気持ちで、焦ることなく暮らすことができるでしょう。

(翻訳編集・真子)

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