栄光の記録にドーピング疑惑 中国陸上馬軍団

90年代に圧倒的な強さで陸上女子中長距離界を席巻した中国の陸上女子チーム「馬軍団」。最近になってチームの元選手らの告発によりドーピング疑惑が高まり、国際陸上競技連盟(国際陸連)が事実関係の調査に乗り出している。

中国大手ポータルサイト・騰訊網の報道によると、馬軍団の元主力メンバー、王軍霞元選手は95年3月に当時のチームメート9人と連名で交遊のあったジャーナリストの趙瑜氏に宛てて手紙を出し、馬俊仁コーチから長年にわたり禁止薬物の服用を迫られていたことを訴えていた。趙氏は最近になってこの情報を同サイトに提供した。

これが事実なら、王元選手が獲得した93年世界選手権1万メートルと96年アトランタ五輪5000メートルでの金メダル、そして93年以来いまだ破られていない3000メートルと1万メートルの世界記録にも疑惑がもたれる。

驚異的な活躍ぶりは日本でも大きな話題となった馬軍団に、当初から薬物使用を疑う声が上がっていたが、ドーピング検査では白だった。今回の報道をうけて国際陸連は中国体育協会に対し、この手紙の信憑性に関する調査への協力を求めているもよう。

AP通信は、国際陸連は王元選手が禁止薬物の服用を認める場合、同選手の世界記録を抹消する可能性があることを示唆した、と報じた。

中国メディアが趙記者の話として伝えたところによると、同氏が98年に出版した著書「馬家軍調査(馬軍団の調査)」に同薬物使用問題を詳述した章があったため、中国当局がその部分の削除を指示、14年にようやく公開を許可した。

趙記者は、中国のスポーツ選手の禁止薬物使用は90年より前に始まっていたことだが、91年以降に馬コーチが選手の間にさらに広めたと証言している。

2000年のシドニー五輪では、直前の検査結果を受けて選手7人のうち6人までが代表から外されたことを理由に、馬軍団は同五輪に参加しなかった。

中国では、スポーツ選手が世界大会で金メダルを獲得することは国家の栄誉とみなされており、スポーツ事業は国の威信をかけた一大プロジェクトでもある。馬コーチと彼の率いる馬軍団は、当時の国際試合で数々の世界記録を打ち立てて多くのメダルを獲得し、国家の英雄と褒めたたえられた。米国営放送、ラジオ・フリー・アジア(RFA)はある中国人ジャーナリストの見方として、政府が今になってこのスキャンダルが明るみになるのを許した背景には、当時の国家最高権力者・江沢民氏の恥をさらすことを目的とするなど、政治的な理由が見え隠れしていると報じている。

(翻訳編集・桜井信一、叶子)

 

関連記事
「孔子学院?新華社?こんなものはもう退屈だろう。中国が本当に世界的なソフトパワー拡大には、モバイルゲームに焦点を当てるべきだ」中国国内メディアは最近、100億米ドル規模に達している中国ゲームの影響力の高まりに自信を見せている。当局は、ゲームコンテンツを通じて中国文化の浸透工作や、親共産主義人物の人気獲得を促進したりしている。
日本料理の「五味五色」が生む健康の秘密。陰陽五行に基づく養生観が、日本人の長寿とバランスの取れた食文化を支えています。
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。