加速化する資本海外流出 中国政府は数々の抑制措置

資本の海外流出がいっそう加速化する中、中国当局は1月中旬から、中国企業の対外直接投資への審査基準を一層厳格化した。今年に入ってから、当局はすでに数々の抑制措置を講じている。

  香港メディアの報道によると、中国(企業)が対外直接投資を行う際にはもともと国家発展開発委員会(国家発改委)と商務部の審査を経る必要があったが、今年1月中旬から新たに国家外貨管理局の審査も義務付けられた。

新たに追加された手続きには、企業が銀行に資金の投資先を説明した報告書を提出することや、5000万ドル(58億9000万円)以上の両替をする際には事前の「審査」が必要であること、投資に関する契約書や支払伝票などを提出することなどが含まれる。そのため、審査にもさらに時間がかかるようになった。

中国政府はこれまでに、国内企業の対外直接投資を歓迎していた。その理由は、政府は対外直接投資が輸出を促進し、海外からの資源獲得や先進的な企業管理体制の導入を後押しする、と考えていたからと見られる。専門家は、今回の規制は中国資本の海外流出が激化したことに対する当局の応急措置と分析している。

昨年8月に大幅な人民元安が起こってから、中国資本の海外流出が急激に活発化している。米メディア、ブルームバーグの統計によると昨年1年間で1兆ドル(約118兆円)の資本が流出した。一部の不動産会社からの情報では、中国で個人又は企業が海外不動産を購入するケースも増加の一途をたどっている。

昨年1年間で、中国の外貨準備高は5000億ドル(58兆9000億円)以上減少している。こうした流れに歯止めをかけるために、当局は今年から個人と企業を対象に様々な対抗措置を取り始めた。

一例として、深圳や上海の一部の銀行では、個人の外貨購入に対して一連の審査基準を設け、購入条件を厳格化しており、国外への資産移転が目的と判断した外貨の購入を受理しないとしている。

中国国内企業に対しては、1月18日から資金の流出が流入を上回る純資本流入のみしか認めず、銀行は指導と審査を行わなければならないと決めている。

また中央銀行(中国人民銀行)は、シンガポールのDBS銀行やスタンダードチャータード銀行など複数の外資系銀行の一部越境外為業務を一時的に停止している。

(翻訳編集・桜井信一、叶子)

関連記事
「孔子学院?新華社?こんなものはもう退屈だろう。中国が本当に世界的なソフトパワー拡大には、モバイルゲームに焦点を当てるべきだ」中国国内メディアは最近、100億米ドル規模に達している中国ゲームの影響力の高まりに自信を見せている。当局は、ゲームコンテンツを通じて中国文化の浸透工作や、親共産主義人物の人気獲得を促進したりしている。
日本料理の「五味五色」が生む健康の秘密。陰陽五行に基づく養生観が、日本人の長寿とバランスの取れた食文化を支えています。
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。