【ぶらり散歩道】–熊本篇– 上熊本駅界隈

上熊本(かみくまもと)には鉄道会社3社の駅が集中しています。「JR上熊本駅」「熊本電鉄・上熊本駅」「熊本市電・上熊本駅」の3駅です。

JR上熊本駅は、1891年(明治24年)に九州鉄道の池田駅として開業、1901年(明治34年)に上熊本駅に改称されました。当時は陸軍施設や官庁や五高(現・熊本大学)に行くには上熊本駅が最短距離にあり、熊本市の表玄関として賑わったそうです。

明治24年に五高の英語教師として熊本に赴任したラフカディオ・ハーン(小泉八雲)に『停車場にて』という作品があります。警官殺しの犯人が逮捕・護送され、群衆の中で幼子を背負った寡婦と対峙。犯人が息子に心から詫びるという印象深いシーンの舞台になったのもこの池田駅(上熊本駅)です。

また、1896年(明治29年)に旧制第五高等学校に赴任した夏目漱石が降りたった駅でもあり、現在は漱石の銅像があります。駅からほど近い場所に、漱石が五番目に移り住んだ家「夏目漱石内坪井旧居」があります。

漱石来熊から120年の時を経て上熊本駅周辺も大きく変貌しました。在来線と並行して九州新幹線が疾走し、上熊本駅舎も2015年3月に高架化され四代目の駅舎となっています。

上熊本駅の南側にある熊本市電・上熊本駅は終点であり、車両基地も隣接しています。記録によれば1935年(昭和10年)3月、段山~池田駅前1.3km開通となっています。その後、路線を伸ばし車両もリニューアルを続けています。

もう一つの駅、熊本電鉄・上熊本駅は1979年(昭和54年)から完全無人駅となりましたが、現在は連日賑わいを見せています。これは「青ガエル」の愛称で親しまれている5101A号車が今年の2月14日に引退することが決まったからです。最後の姿を写真に収めようと県内外から多くの鉄道ファンが駆けつけています。

JR上熊本駅舎 現在が4代目の駅舎となる

 

市民の足として活躍している熊本市電

 

2月14日に最終運行が決まった「青ガエル」を撮影する鉄道ファン

 

(文・佐吉)