中国最新報告書 「貧富格差が危険ラインに」

中国の名門大学、北京大学の最新調査報告・家庭追跡調査報告書シリーズ「中国人生活発展報告2015」により、同国の貧富の差がいっそう拡大していることが改めて確認された。同報告書によると、全体の1%の世帯が国民総資産の約3分の1を保有する一方で、全世帯数の25%を占める最下層世帯が所有する資産はわずか1%前後にとどまり、貧富の格差を示すジニ係数は危険ラインに迫っている。

報告書が発表した中国の種類別ジニ係数で、所得のジニ係数は80年代初頭の0.3前後から現在は0.45以上に、資産のジニ係数は95年の0.45から12年の0.73に上昇している。

ジニ係数とは、国民全体の所得や資産分配の不平等さ、あるいは格差を測るための指標の一つである。値の範囲は0から1で、値が大きいほど格差が大きく、それにより社会の不満も高まることから、一般に社会騒乱多発の警戒ラインは0.4、危険ラインは0.6とされている。

12年9月に中国当局が発表した初の「社会管理に関する政府報告書・中国社会管理革新レポート」には、中国における社会格差が既に同警戒ラインに迫っていると記されている。

また、北京大学の今回の報告書によると、教育、医療保障等の面における格差も一層顕著になった。健康状態が比較的劣る低所得者層より、高所得者層が充実した医療保障を受けており、収入が低い農村部の住民が自己負担する医療費の割合は、都市部の住民より明らかに高いという。

報告書は「こうした社会格差は今後、より一層広がる兆しを見せているため、早急に解決しないと、深刻な社会不安を引起しかねない」と警鐘を鳴らした。

15年5月10日、米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、中国出身で米国在住の経済学者・何清漣氏の論文を引用し、富の分配が大きく偏ってしまった根本的な原因は、ここ20年で中国の権力者層が好き勝手に富の独占を進めてきたことにあると報じ、何氏の見方として、低所得者層が中国人口に占める割合は60%に上ると伝えた。

香港の政論誌「争鳴」の15年10月号によると、8月下旬から9月下旬にかけて、習近平国家主席は指導部の内部会議などで、政府幹部及びその一族が不当な手段で莫大な利益を得ていることが、党内・社会・政局の安定を脅かしていると再三警告したという。

(翻訳編集・桜井信一、叶子)

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