株式会社H.I.S.創業者・澤田秀雄氏 再建伝説を語る
澤田秀雄氏は、株式会社エイチ・アイ・エスの創業者であり、エイチ・エス証券会社の社長。かずかずの事業で「再建伝説」を造ってきた。
2003年、民営化したモンゴルの元国立銀行・ハーン銀行に経営参画し、破綻寸前から再生させた。そして、開業18年ずっと赤字続きだった日本有数の大型テーマパーク・ハウステンボスを蘇らせた話は有名だ。半年で黒字に転換させ、6年目の今年は100億円の利益を出す見込みだ。2014年、今度は愛知県蒲郡市にあるテーマパークの再建を始めた。前年度より入場者数を増やし、生き返らせた。
『三国志』、孫子の『兵法』、司馬遷の『史記』、日本では徳川家康の本を多く読んでいるという澤田氏の経営理念は「事を計画するのは人だが、その成否を決めるのは天である(人事を尽くして、天命を待つ)」。ことわざ通り、苦境から成功へと導く知恵を生み出してきた。
他者への貢献をモットーとする澤田氏。「利益だけでモノを考えてはだめ。世の中のためになる事業をやっていくこと。(このような)物の考え方、ポリシーが非常に大事だと思う」。
このたびの大紀元日本のインタビューでは、澤田氏の名を知らしめた、ハウステンボス再建伝説をうかがった。
―――ハウステンボスのような、はじめて取り組むテーマパーク業界を引き継いだ時、リスクとチャンスをどのように考えましたか?
18年間ずっと赤字で、誰もやる人がいませんでした。経営者が何度も変わり、私の前任者は7年で300億円を投じても、毎年数十億の赤字でした。その前は何百億。6年前、(再建を)依頼されましたが、最初は断りました。お客様が減り続け、楽しくないし、暗い。優秀なスタッフはみんな辞めていました。損するなら何百億も損したはずです。ただ、魅力や価値はあった。ディズニーの1.6倍の規模で、オランダ風の町並みが望める。価値や魅力を感じました。
―――どのような戦略で1年目に経営赤字から奇跡的に黒字にしたのでしょうか?
無駄な経費を2割削減して、入場者売上は2割増やしました。すると4割の増収増益になり、黒字へ転換しました。データの収集とお客様の意見に基づき、いろいろな案も繰り返して試行しました。最初は失敗が続きました。6年前、私が始めたときの来場者は、年間130万人ぐらい、今は年間300万人です。今季の決算は100億円の利益が出る見込みです。
―――ハウステンボス再建のうえで、お客様をもう一度呼び戻すためにほかのテーマパークのやり方を参考にされましたか?
ほかのテーマパークの真似をするなら、発展できないでしょう。引き継ぐ時にずっと考えていたのは、ハウステンボス独自なものがあれば再生でき、今後の発展もできるということでした。今までのテーマパークとは違う、独自の方向性を見出すことです。
当時、ハウステンボスを再建するとき、お客様にいかに喜んでいただくか、いかに感動するものを作っていくか、について点数を付けました。新しいイベントを開催したらお客様が点数を付けて、3.5以下ならイベントをやめる。3.5から4は改良の余地あり。4から4.5はOK。4.5以上はベリーグッドで、口コミが広がり、リピーターも増えます。
現在、「花の王国」「光の王国」「ショーと音楽の王国」「ゲームの王国」今年は「健康と美の王国」を作り、外国人観光客も2割増えました。
最初の「花の王国」は園内の面積の広さを活用し、100万本のバラを植えました。香りも良い。人気が高まり、お客様がどっと増えました。冬はバラが1300万個の世界一のイルミネーションに代わって、暖かく、明るく、きれいで感動します。
日本の一般的なテーマパークは若い人やファミリーが中心ですが、ハウステンボスはシニアもいます。現在、園内で2日間滞在しても全部は見られないでしょう。
6年経って、成績は上がりましたが、点数的にはまだまだ、58点。及第点にはなっていないですね。次の目標は、社員たちの素質を高めることで、サービスを改善して、70点になればお客様も倍以上に増えるでしょう。
―――現在、来日観光客が急速に増えていますが、ハウステンボスは外国人観光客を呼び込む戦略はありますか?
海外観光客の激増は日本の観光産業に良いことですが、ホテルや大型バス不足はサービスに影響します。ハウステンボスは、サービスの質を重視します。海外からのお客様が急に増えると、言葉のサービスやいろんなケアができなくなります。海外からのお客様は2割、3割ずつ増えるのが良いでしょう。現在、ハウステンボスを訪れるお客様は、海外(韓国・台湾・香港・タイ・中国)が2割で、8割は日本。九州地区は全体の6割を占めます。外国人観光客にも、より質の高いサービスを提供したいと思っています。
―――成功した実業家として、若い人へ、経営や起業の条件、アドバイスはありますか
企業で大切なことは、利益よりも、何のためにこの企業をやっているか。世の中のため、地域のため、お客様に感動してもらうためなど、ポリシーが非常に大事です。これだけで利益は出ないけど、一番大切です。
失敗もあるけれど、新しいことに常にチャレンジする。問題が起きても、明るく元気でいる。失敗しても諦めなければ、継続していけます。ベンチャー企業は最低でも3年続けば、成功するはずです。
利益をあげないと会社も大きくならない、良い事務所にも移れない、食べていけない。利益も大切だけど、だからといって利益だけで物事を考えてはいけません。文化や芸術も大切にしたり、利益を一部寄付したりと、社会貢献も大切です。利益はおのずとついてきます。
(インタビュ-・撮影 牛彬/大紀元)