中台が初のスパイ交換 台湾「歩み寄りの対応だ」

台湾国防部(国防省にあたる)は11月30日、中国と台湾が10月、拘束していたスパイの身柄を交換したことを発表した。台湾総統府は、11月初旬に行われた初の中台首脳会談を前に、双方が歩み寄りを示した対応だとしている。

中国は10月13日、台湾軍事情報局の大佐、朱恭訓氏と徐章国氏を仮釈放し、2人はすでに台湾に戻っている。台湾が前日の12日に釈放したのは、1999年から無期懲役刑を服役した中台二重スパイの李志豪氏(70代)、現在は香港に帰っている。

報道などによると、2006年5月、朱氏と徐氏の2人は台北からベトナムに入り、中国人の工作員と会う予定だったが、ベトナムの警察当局が「中国国内で交通事故を起こした」との理由で2人を拘束、中国側に身柄を渡した。2人はスパイ罪で無期懲役の判決を受けて服役していた(後に懲役20年に減刑)。一方、中国のスパイである李氏は1980年代に香港に密入国、後に台湾に留学し、台湾軍事情報局に諜報員として採用された。中国は李氏に台湾側の信頼を得させるため、一部本物の情報を渡した。後に李氏は同情報局の少佐に昇進できたが、1999年に二重スパイの身元がわれて逮捕された。

台湾メディアの報道によると、今回釈放された2人を除いて、中国に拘束されている工作員はまだ100人ほどいるという。

近年、中国が台湾の現役または退役した軍の幹部を金銭や美人局などでスパイに取り込む傾向が強まっている。今年11月中旬、台湾軍事情報局の羅奇正・前上佐がスパイ罪で18年の懲役刑を受けたばかり。

台湾国家安全局の李翔宙・局長は今年5月、ここ5年間で摘発した33のスパイ案件のうち、退役軍人が最も多いことを明らかにした。14年に逮捕された中国工作員の鎮小江は、台湾の軍幹部らをターゲットにスパイ網を拡大したとされる。無期懲役刑で服役中の羅賢哲・元台湾陸軍少将はその戦果となった1人である。

関係筋によると、中台間の「スパイ交換」は初めてのこと。台湾は中国のスパイをさらに1人釈放する可能性があるとみられる。

今回の件ついて、中台双方はあくまでも「スパイ交換ではなく、仮釈放だ」としている。

(翻訳編集・叶子)

関連記事
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]