中国共産党は何を恐れている? 人権派弁護士・高智晟氏の今

米キリスト教系人権団体、対華援助教会の会長である傅希秋・牧師は11月10日のツイッター上で、中国の有名な人権派弁護士高智晟氏(50)からの私信を公開した。11月3日に書かれたこの手紙の中で、健康な歯は3本しかないという高氏は、「共産党政府は、私が歯医者に行くことは国家安全に脅威をもたらすと恐れるため、頑として治療を受けさせてくれない」と皮肉ながら、自身の置かれた現状を明かした。

3年の刑期を終えて2014年8月に釈放された当時、刑務所での虐待や拷問により極度に衰弱していた高氏は、記憶力や言語力が著しく衰え、大部分の歯は抜け落ちていた。数年前に2人の子どもを連れて米国に脱出した高氏の妻、耿和さんが11日に米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材で語ったところによると、高氏の両側の奥歯はほとんど抜け落ち、残っているのは前歯10本程度で、2、3本を除きすべてがぐらついているため、おかゆしか食べることができず、歯の激痛のせいで温かい食事すら摂れない状態だという。

耿さんは「夫の精神力は並外れて強靭で、体の回復も比較的順調だが、歯の問題だけはどうすることもできない」と訴え、歯科治療のために予約した西安行きの列車の切符を、当局の指図により、2度もキャンセルさせられたと話した。

傅・牧師はVOAの取材に対し、「強大国家だと自負し、自信満々の一国の政府が虐待で壊れた数本の歯を国家安全の脅威とみなしているとは、大したお笑い草だ」と高氏への扱いを批判し、10日午後3時頃に警官3人が高氏の自宅に押し入り、対外的な発言を控えるようにと脅したことを明らかにした。

傅・牧師が今回の手紙を公開した目的について、国際社会の高氏への関心を呼びかけるほか、中国指導部に対し、高氏の日常生活の自由、治療をうける権利をはく奪しないよう求めるためだとしている。

高氏は1996年から人権侵害を受ける社会の弱者層に法的支援を提供してきた。不当逮捕される法輪功(中国伝統気功)愛好者やキリスト教など「地下教会」のメンバーの弁護を引き受け、中国最高指導部に法輪功弾圧の中止を求める公開状を送るなどしていたが、2006年8月に逮捕され、同年12月に国家政権転覆罪で懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を受け、2011年に収監されて昨年8月に釈放された。しかし、高氏は北京の自宅に戻ることは許されず、親戚の家に身を寄せており、半ば軟禁状態にある。

(翻訳・桜井信一、編集・叶子)

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