反腐敗キャンペーン

中国当局「キツネ狩り」筆頭 汚職官僚に「生きる道」示す

 公的資金を横領し、12年前に中国国外へ逃亡した浙江省の元高官・楊秀珠(69)が最近、米国でメディアの取材に応じ、逃走の理由は「江沢民元国家主席の家族の怒りを買い、政治的迫害を恐れたため」と主張した。国連の反拷問条約に基づき、楊は、強制送還は避けられるという。専門家は、楊のケースは、他の海外逃亡中の汚職官僚に「生きる道」を示したと分析した。

 楊は、中国当局が海外に逃亡した汚職官僚を帰国させる計画「キツネ狩り」の対象者の一人。「中国一の女性巨額横領犯」と揶揄されている。4月、中国政府は国際刑事警察機構(インターポール)と連名で、100人の汚職官僚リストを公開した。楊は「筆頭」に記されており、優先度の高さがうかがえる。

 2003年4月、楊は娘の家族を連れて上海からシンガポール経由でオランダに逃亡し、政治亡命を申請したが、拒否された。その後、米国ビザ免除指定国であるオランダのパスポートでアメリカに入国した。

 米司法当局は5月に、ビザ免除関連規定に違反した容疑で、楊を逮捕した。強制送還されると報じられていたが、中国帰国後は迫害を受ける恐れがあるため、楊は、米国で政治亡命を申請した。

江沢民元主席の次男の怒りを買う

 楊への取材は、拘留先のニュージャージー州で3日、韓国系メディア・世界日報が行った。それによると、楊は、浙江省の建設庁副庁長就任時、江沢民元主席の次男・江綿康氏の「怒りを買った」ことで、政治的な「報復」の対象となったという。

 楊の話によると、江氏が浙江省内の土地32万平方メートルを求めたが、これを拒否した。「私は法律に基づいて仕事をした」「そのため、多くの人々の恨みを買った」と自らの正当性を主張した。

 楊の裁判は6月、ニューヨーク移民裁判所で開かれた。楊は中国へ帰国した場合、迫害を受ける可能性があるとして、米国亡命を申請した。

 楊の弁護士は9月28日、亡命申請は却下されたものの、国連の反拷問条約の保護条件にあてはまる可能性があり、「強制送還は免れるだろう」とメディアに明かした。


習近平政権が「キツネ狩り」筆頭とする楊秀珠

米国で逮捕された、汚職官僚・楊秀珠(大紀元資料)

 反腐敗キャンペーンをまい進させる習近平政権は、100人の「キツネ狩り」リストの筆頭に楊秀珠をあげた。楊は、「習氏に関する不利な情報を持っていると、習氏は考えているかもしれない」と述べた。

 浙江省温州市の副市長在職中、習主席は当時、浙江省の党委員会書記だった。

 9月18日、同じく「キツネ狩り」リストに載る一人で実弟・楊進軍は中国へ送還されている。

 温州市の紀律検査委員会は、楊により不正に流れた資金は2.5億人民元(約50億円)以上と発表した。しかし、楊は「数字が水増しされた」として、巨額横領を否定した。

江沢民ファミリーの腐敗明かした初ケース 海外逃亡の腐敗官僚に「生きる道」示す

 楊は、海外に逃亡した汚職官僚のなかで、江沢民元主席の家族の腐敗を明かしたはじめてのケース。これにより、中国の暗部である政治的迫害と拷問にスポットをあて、強制送還を回避させた。大紀元コメンテーター・夏小強氏は、楊のケースは、海外逃亡中の他の腐敗官僚に「生きる道」を示したと分析する。

 夏氏は、江沢民政権時に腐敗は深刻化したと見ている。「官僚同士は腐敗という縄で繋がれていった。彼らは体制の『被害者』だ」「江沢民派の腐敗と迫害を暴露することで、彼らは命を取り留めることができるだろう」と述べた。

(翻訳編集・佐渡 道世)

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