中国に迫る食糧危機 食糧の輸出大国から輸入大国へ
中国当局は2014年2月、長年採用していた穀物生産の自給自足という方針を放棄した。この政策転換は輸入量を増加させることを意味し、13億人の腹を満たすために世界の資源が搾取されるという意味では、悪い知らせだ。
当局の統計によると2013年、中国は6300トン以上の大豆を輸入した。この数字は2000年の6倍に当たり、国内生産を8割に押し下げた。小麦、米、トウモロコシも同様に輸入量は増加している。しかし食料需要は増加している。中国農業省の曾衍德氏によると毎年500万トン以上も需要は増えており、食糧供給のひっ迫は長期に続くと2013年12月に発表している。
世界の農業事情に詳しい専門家シャファリ・シャーマ氏は「中国の需要の微々たる増加は、他国の輸出の大幅な増加を意味する」と指摘する。また穀物生産には「土地と水資源が不可欠」であり、その犠牲を他国が払うことにも警鐘を鳴らす。例えば中国輸出向けの「もやし」の生産には、米国5万世帯分の水が使われており、ブラジルでは中国の大豆市場向けに大規模な森林伐採を行った。
シャーマ氏によると、米国穀物会議では、中国は2022年までに1900万~2000万トンのトウモロコシを輸入する必要があると推測する。その量は世界市場における3分の1を占める。
米国農務省の最近の発表によると、同国の食物・農産物の最大輸出国は中国で、全体の2割を占める。2013年、中国の食糧輸入量は6年連続で過去最高を記録し、大豆、小麦、トウモロコシで267億ドル(2兆6700億円)に達する。これは、中国は食糧の輸出大国から輸入大国へのスイッチが入ったことを意味している。
また中国は畜産業についても政策転換が迫られている。畜産は多くの資源を必要とするが、13億人のための畜産を維持するには、中国国内では耕地や水不足が懸念されている。
ドイツ在住の材料工学博士・王傑遜氏は、近年の中国当局による大規模な土地収用、生態退耕、農業構造調整や自然災害による損失、耕地の汚染などの問題により、中国の耕地面積は減り続けているという。
「多くの田畑は収用され、過度に開発された。多くの高汚染企業が大都市から農村に移転し、農業従事者も減り続けている。同時に汚染企業が未処理の工業廃水を大量に排出し水質汚染問題も起きている」と指摘する。
2013年の中国政治協商会議では、中国の耕地の16%が重金属汚染にさらされ、大都市の状況はさらに深刻だとの調査結果が発表された。特に広州市では半分以上の耕地がカドミウム、ヒ素、水銀などの重金属に汚染されており、遼寧省八家子の耕地からは基準値の1.6倍のカドミウムと鉛が検出されているという。
これらの汚染穀物を畜産向けに利用した場合、人体の影響は明らかではないが、良い影響をもたらすとは思えない。
国際農林水産業研究センターの銭小平氏は、中国の所得向上により食の多様化・洋風化が進み、畜産物消費は2030年には2005年の1・9倍になると予測している。しかし中国は国内生産および輸入量を足しても食糧需要に見合わなければ、穀物を大量消費する畜産業を諦めなければならなくなる。
中国工程院の袁隆平(えんりゅうへい)院士は中国の食糧危機は逃れるすべがなく、いつでも社会危機を引き起こすだろうと警告する。「目に浮かぶのは混乱、食人、飢餓で迷う人々の姿。この状況はいつでも発生する可能性があり、そして避けることは出来ない」
(翻訳編集・佐渡 道世)