「工場廃棄物で健康被害」 浙江省で連日抗議 工業汚染、対立の新たな領域

【大紀元日本9月20日】工業汚染は中国における官民対立の新たな領域となっている。先月、大連で起きた石油化学工場の閉鎖・移転を求める大規模な抗議事件に続き、中国南部の浙江省で15日から17日、太陽電池工場からの排水・排気で健康被害が出たとして、周辺住民1000人以上が工場の前に集結し、抗議活動を行った。当局は大量の武装警官を出動し、抗議者に暴行を加えた上、20人を公共秩序騒乱罪などで拘束した。

問題の工場は、2006年から浙江省海寧市袁花鎮で稼働している太陽光電池工場「晶科エネルギー」。抗議活動のきっかけは先月26日、工場付近の川で魚が大量死しているのが見つかったことだ。魚だけでなく、現地村民の周さんは本紙の取材に対し、最近行われた健康診断で、数十人の村民がガンを患っており、うち数人の村民が白血病にかかっているとの結果が出たという。ラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)も、現地住民がインターネット上で公表した健康診断報告書を引用して、31人の村民がガン、うち6人は白血病だと報じている。

本紙の取材に答えた他の村民・郭さんによると、ここ数年、この工場で働く若い女性数人が妊娠できないでいる。また、工場から300メートル離れた所には鎮の小学校があり、村民は子ども達の健康への影響を危惧している。

工場からの排水・排気の問題をめぐって、村民らはかねてから地元政府や工場に訴えてきたが、取り合ってもらえなかった。今回は1000人以上の住民が晶科の入り口に集まり、環境汚染についての説明を求めた。新華社の報道によれば、一部の住民は窓を割り、車8台を横転させた。一方、現地村民の証言では、大量の武装警官が催涙弾を発射し、抗議参加者を退散させた。また、16日の抗議活動を取材に訪れた地元浙江省のテレビ局の記者が工場の保安員に暴行され、撮影器材が壊されるなどの被害を受けた。抗議活動は15日から3日間続き、一部の村民が警官に連行された。

中新網などの政府系メディアは、抗議に参加した人数は500人と報じており、米VOAの報道と本紙の取材で入手した「1000人以上」との情報より少ない。また、当局は、魚の大量死は工場廃棄物に基準値以上のフッ素化合物が含まれていたことが原因だと認めているが、ガン発生率の上昇を否定している。当局はインターネットで出回っている情報は「デマ」だとし、これを流した村民・孫さんを拘束したという。それ以外の村民20人は公共秩序騒乱罪や器物損壊罪で拘束されており、ほかにも連行された村民がいる。

3日間続いた大規模な抗議事件はとうとう地元政府を動かした。海寧市政府の沈向宏氏は17日に行われた記者会見で、政府は抗議事件の処理を進めると同時に、環境汚染について厳しく対応すると約束した。また、同市環境保護局の陳洪明・副局長は、政府はすでにこの工場に汚染排水を生じる操業の停止を命じたと発表した。

工業汚染は官民対立の新たな火種

15日に発表された中国の「社会安定リスク評価体系研究報告」の中で、現在9種類の抗争が社会不安につながると記されている。立ち退きや賃金問題、医療問題などに続き、「汚染抗争」も挙げられている。

中国の経済高成長は、天然資源の略奪ともいえる自然破壊によって支えられてきた。今回、海寧市で起きた対立の火種も太陽光電池工場による汚染廃棄物に起因する。グリーンエネルギーは中国政府が全力で推し進めているもので、世界への覇権をもねらっているが、その足元では自然環境の多大なる犠牲が払われている。汚染による健康被害が表面化する今、健康を代価とする発展に人々が立ち上がり、「汚染抗争」が各地で広がる様相を見せている。

そのマイルストーン的な事件は先月14日、大連市で起きた化学工場の移転を求める数万人規模の抗議活動。大連市政府は当日、即座に市民らの要求を受け入れた。その直後の17日には、江西省蓮花県でも、合金生産工場の廃棄物が魚の大量死をもたらしたとして、現地住民数千人が抗議活動を行った。この時は武装警察が住民らに暴行を加え、数人にケガをさせたという。さらに、30日に、雲南省曲靖市陸良県で発生した六価クロム不法投棄事件により、問題の化学工場周辺の地下水から基準値の242倍の六価クロムが検出され、下流にある珠江への影響が懸念されている。

立ち退きや賃金などをめぐる抗争は、対象者が限られる上、一般庶民であるケースが多いのに対し、工業汚染をめぐる抗争は、対象者が多く、政府に対して大きな影響力をもつ中産階級や富裕層も含まれる。一方で、工業汚染の裏には利益連鎖が存在しており、地元政府と企業の癒着により、汚染の改善がなかなか図られていない。「健康を守る市民」対「利益を守る政府と企業」。このような対立が今後ますます増え、ますます激しくなるとRFIは指摘する。

(記者・李楽、翻訳編集・張凛音)
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