温首相、市場経済国の早期承認を要求 欧州救済の見返りに=夏季ダボス会議
【大紀元日本9月17日】「中国はこれまで欧州を支援すると表明してきた。今後も対欧州投資を拡大する」。温家宝首相は14日、中国大連市で開かれた夏季ダボス会議(世界経済フォーラム主催)の冒頭演説で欧州債務危機への積極的な姿勢を強調した。
だが、温首相はこれらの支援の見返りに、欧州の主要国リーダーに「中欧関係を戦略的な視点で大胆に扱う」ことを提起し、具体的には、中国に完全な「市場経済国」の地位を与えることを求めた。
「市場経済国」の地位を得られると、貿易紛争に巻き込まれた時に中国企業は今までより有利になる。世界貿易機関(WTO)の規則に基づき、中国は2016年までに自動的に市場経済国の地位を得ることになっているが、それより前に「誠意を示すことは、友人としての振る舞いだ」と、欧州連合(EU)に中国の市場経済国地位の早期承認を求めた。
同じ14日、中国国家発展改革委員会(発改委)の張暁強・副主任がダボス会議のメディア取材で、中国は依然、債務危機に見舞われた国の国債を購入する意向があると発言しながらも、「国債購入よりも投資のほうが望ましい」と語った。「米国を含め、各国はもっと開放的な態度を示し、国債発行よりも投資を受け入れてほしい」と注文を付けた。
政治的利益がねらい
中国が債務危機に陥った国の国債を購入することには政治的な目論みがある、とニューヨーク市立大学の政治経済学教授・夏明氏は指摘する。「ギリシャはNATOの加盟国であり、中東やヨーロッパにつながる通路である。政治・経済・軍事の面において戦略的な意義をもち、ギリシャに入ることはEUに浸透することにもなる」。また、イタリアについて夏氏は、「イタリアの経済力と影響力はギリシャより遥かに大きい」とし、「中国当局はこれらの国を足がかりに西側に入り込み、間を裂き、アメリカなどの影響力を低下させることを狙っている」と分析した。
また、中国政府が望んでいる投資について夏教授は、中国が海外で行っている投資の多くは実質上、政府が運用する政府系ファンドであると指摘する。
米サウスカロライナ大学の謝田教授は、中国が2009年にポルトガルとアイルランドの国債を購入した意図をこう分析した。「これらの国にEUを説得してもらい、中国の市場経済国の地位を認めてもらうためだ」。さらに、EUに武器輸出の制限を緩めることを要求し、ヨーロッパから先端的な武器を仕入れることで、アジア地域で軍事的な優位を保つ。それにより、「地域や世界に威圧感を与える」ことを目論んでいるという。
早期承認は難しい
15日付の英フィナンシャル・タイムズ紙はEUの政府関係者の話として、中国は市場経済国と認定されるための基準の多くを満たしておらず、欧州が早期に中国にこの地位を与える可能性は低い、と伝えている。
夏明教授も「米国と欧州は中国を完全な市場経済国と見なしていない」と指摘する。中国の経済市場は政府による干渉が多く存在し、補助金や関税などを用いて中国の国有企業などを国際競争の中で有利な立場に立たせている。先月、米国の太陽光パネルメーカーが相次いで経営破綻に追い込まれたのは、中国政府のこの種の補助金により、国際市場で価格競争が激化したことが原因だと夏教授は指摘する。
中国を市場経済国と認定すれば、このようなケースでもアンチダンピングなどの貿易救済措置が軽減されることになり、欧米諸国にとって不利になる。「金銭外交」を通じて市場経済国の地位を獲得するという中国政府の狙いは、実現しにくいと夏教授は見ている。