中国、「臨界点」を迎えるか 専門家「反国民の政権を助けてはならない」

【大紀元日本6月3日】米国在住の中国経済評論家・章家敦氏は5月29日、「中国は臨界点を迎える アメリカは何をすべきか」と題する評論を発表した。中国を世界でもっとも政情不安定な国として位置づける章氏は、その中国が今まさに「臨界点」を迎えていると指摘した。また、この窮地に陥った政権に対して、「決してしてはいけないことは、それを助けることだ」と米政府や国際社会に訴えている。

中国には指導部を憂慮させる危機が溢れていると氏は指摘する。庶民にとっては、腐敗の横行、専制政府、物価の高騰、就職難など、生活を脅かす要素があまりに多い。昨年1年間で起きた群衆抗議事件が23万件を超えるとも言われるこの「世界でもっとも政情不安定な国」で、今年2月から「中国のジャスミン革命」の呼びかけや異見人士に示された過剰反応は、指導部の極度な危惧を表している、と章氏は分析した。

先日オバマ大統領が行った中東政策演説の中で、専制政権は「見かけは安定しているように見えても、中にいる人民の自由への希求は抑え込むことはできない」と指摘した。「広場から広場へ、都市から都市へ、国から国へ、基本的権利を求める人の輪が広がっている」という。

章氏は、中東の専制政権の国で起きていることは中国でも起きていると指摘した上で、「ワシントンも他の国の政府も北京政権の崩壊に対して準備を整えていない。それどころか、その政権を『必要な』パートナーと見なしている」と述べた。このような姿勢は間違っていると明言する章氏は、アメリカがもっともしてはいけないことは、窮地に陥っている中共政権をなんらかの形で支持することだという見解を示した。

章氏は22年前の天安門事件を引き合いに、中共政権を助けた際の行きつく先を分析した。先月出版された米キッシンジャー元国務長官の著書『On China』によると、1989年に起きた天安門事件後わずか3週間で、米41代ブッシュ大統領が、当時のスコウクロフト安全保障問題担当補佐官とイーグルバーガー国務副長官を北京に派遣した。この_deng_小平への近寄りポーズは、「その政権が数百、いや、数千の中国の一般民衆を殺害したにもかかわらず」、国際社会はそれを助けるべきだという合図を出していた、とキッシンジャー氏は指摘する。

「アメリカが天安門事件後の中共政権を窮地から助けたのだ」。中国民主陣線副主席で著名な女性作家・盛雪氏(カナダ在住)は2009年にニューヨークで開かれた研究会でこのように語った。「アメリカの態度はある程度、_deng_小平が天安門事件後に経済改革を推進させる一方で、政治面で強硬制圧の姿勢を貫くことを助長した」

この時のことは、中国の銭其琛・元外交部長(外務大臣)が著書『外交十記』の中でも言及している。それによると、_deng_小平がスコウクロフト氏らと会談した際、「中共は25年間戦争してきた。恐れるものは何もない」と豪語した。また、彼は中国が国際社会の制裁を受けたことはアメリカの責任だとし、「この不愉快な状況を片付けるのは、アメリカの言行にかかっている」と語ったという。

アメリカの2人の特使が帰国すると、ブッシュ大統領は_deng_小平に、先進7カ国首脳会議(G7)でアメリカと日本が中国を叱責する文言を削除したことを知らせた。それでも、同年8月の_deng_小平からの返事の中で、「解鈴還須系鈴人(いったん付けた鈴は、付けた人が外すべきだ)」と、アメリカに制裁を中止するよう注文を付け、また、米国がリードしたこの制裁は、「中国の利益と尊厳を損ない、米中関係を困難なものにした。この責任は米側にあり、米側が解決しなければならない」と批判したという。銭氏によると、イラク戦争が始まってから、米国は中国の協力が不可欠だと認識するようになった。

90年代に入ると、米国は、貿易と人権を分離する方針を表明し、西側世界は、中国とは、「対抗」の代わりに人権「対話」を始めた。これらの動きと同時に、中国当局は旧ソ連諸国で起きた一連の「色の革命」によるドミノ効果に対抗する方策を周到に用意した。盛雪氏によると、これらの方策に、軍隊を掌握することや、財産や経済の権利を掌握することを含めるという。「共産党は、財産や経済をしっかり手中に抑えれば、政治に安定した土台ができると考えた。党が強大な利益主体となり得たら、国民への統制力も強まる。中共政権はこの方策により、(社会主義体制を崩壊させる)『和平演変』への対抗や、愛国主義・民族主義の強化など、すべて実現してきた」

これを踏まえ、いまの中共政権の窮地に対して、「アメリカは中共を再び助けてはならない」と章氏は訴えた。2月からの異見人士への制圧は「天安門事件以来もっとも深刻だ」と指摘した。「中共は後退しているが、国民は前進している。この2つのプレートは相反する方向に動いており、そのうち地震が起きるに決まっている。政府と国民の長期抗争はこれから爆発するだろう」

「西側世界は中国を甘く見ている。これは我々が再び中共を助ける危険性をもたらしている。反国民の政権を支持する結末は手痛いもので、歴史的な間違いとなる」と章氏は警告した。

(翻訳編集・張凛音)
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