人民日報『党の政治規律を守れ』 温家宝への警告か 専門家「指導部が分裂」

【大紀元日本6月2日】中国共産党の機関紙「人民日報」はこのほど、共産党員や幹部に対して、最高指導部と高度な一致を保つことを要求する内容の評論を掲載した。「党の政治紀律を固く守れ」と題する同文章は、「いかなる党員であれ、党内での人望と職務がどんなに高くても、党の政治紀律に違反した場合、厳しい叱責と教育または処分を受ける。深刻な結果を招いた人に対しては、党内の紀律や法律に基づいて厳罰に処する。断じて容赦しない」と明記した。論文の署名は「中紀聞」で、中共路線の実行や党紀整頓をする機関、中共中央紀律検査委員会を意味する。

中国問題の専門家らは、この動きは中国最高指導部内部の分裂を反映していると指摘する。また、政治改革の必要性を訴え続けている温家宝首相などに暗に警告しているとの見方も強い。

同文章は、極少数の幹部は党の重大政治政策について、勝手気ままに論じたり、我が道を行ったりしていると叱責し、「党の政治紀律を守ることは厳粛な政治的闘争である」と強調した。

昨年8月以来、温家宝首相は国内外の様々な場で政治改革の必要性を強調し続けており、そのことについて「人民日報」は批判する文章を掲載していた。胡錦濤主席も、過去30年の経済成長は現有の政治構図の成功を証明したとして、温首相の同論調をけん制している。そのような状況下で、温首相は依然として、政治改革の問題を「勝手気ままに論じ、我が道を行く」姿勢を崩さず、「最高指導部内部に封建勢力と文化大革命勢力が存在し、政治改革に反対している」と発言したことも公表されていた。

そんな中で、今回発表された中紀委のこの文章は温家宝首相を暗に批判しているとの中国問題専門家の意見は根強く、高い関心を集めている。

一方、北京在住の憲法・政治学者の張博樹氏はメディア取材に対して、同文章は中共のベテラン幹部で共産党史の研究者・辛子陵氏をターゲットにしている可能性を指摘した。辛子陵氏は今年1月、「温家宝潰し」を批判する文章を発表してから、党内で取り調べを受けている。最近では、毛沢東を批判する『赤い太陽の墜落』と題する著書を出版したため、党内の左派団体から集中攻撃を受け、3月以来公に姿を見せず消息を絶っている。今回の中紀委の文章の「党と国家のイメージを壊している」という文言は同氏を指しているとの見解もある。

米国にある中国独立作家の団体「独立中文作家筆の会」の事務局長・趙達功氏は、米VOAの取材で、「このような状況でこのような文章を発表するのは、裏に最高指導部の大物が絡んでいるに違いない。今は、中央の権力闘争が非常に激しいのだろう」と述べた。

コロンビア大学の元訪問学者で、ニューヨーク在住の政治評論家・陳破空氏は、次期政権と交代する時期が近づくにつれ、中共内部では、中央から地方まで各派閥間の権力闘争が激しくなっていると指摘、同文章は今の党内のこの種の分裂状況を指しており、特定の個人ではない、との見方を示した。

同氏はVOAの取材で、次のように語った。「中紀委のこの文章はある種の憂慮を表している。つまり、中共の内部、特に最高指導部が分裂している情勢に対する憂慮である」

一方、1カ月前には、「人民日報」は今回の論調と相反する文章を発表し、包容する心で異なる意見に耳を傾けることを呼びかけていた。そのほかの政府系紙にも最近、矛盾する論調の文章がたびたび掲載されている。

このことについて、陳破空氏は、最高指導部の権力配置が平均化された結果であり、その権力闘争の激しさを表している、と指摘した。「毛沢東や_deng_小平の時代が過ぎてから、中共最高指導部では絶対的な権力を握る人物がいなくなった。その結果、権力が平均化され、それぞれが一部の機関の権力を握るようになった。だから、皆それぞれの声を出している」という。

「独立中文作家筆の会」の趙達功・事務局長は、「(最高指導部の権力交代を行う)来年の十八大(中国共産党第18期全国代表大会)を前に各権力派閥、改革派を含めて皆出てきて声を出そうとしているため」と述べた。

米国の中国語ニュースサイト「多維新聞」は、「歴史は温家宝首相を時代の焦点に立たせた。彼は中国当局の致命的な弱点をずばりと言い当てた。つまり、政治改革しないと政権が駄目になる。政治改革すれば中共政権の未来はなくなるということだ」と報じた。

(翻訳編集・叶子)
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