5月の中国、爆発月? 当局、四面楚歌の危機か

【大紀元日本5月30日】「ホワイトシャツを着るなと警告された」―5月23日、北京大学副教授の夏業良氏はツイッターでこう呟いた。22年前に北京で民主化を求めた学生らを当局が虐殺した「六四天安門事件」の名誉回復を求める同氏は、最近中国国家安全局から、6月4日当たりに記念活動を行ったり取材を受けてはいけない、追悼の意を表すと見られるホワイトシャツの着用も禁止と警告されたという。

夏氏と同じような話を受けた人たちは、ほかにも中国各地に多くいる。ほとんどが異見者や人権活動家だ。この人たちを黙らせれば、6月4日までなんとか無事に過ごし、国家の「安定を維持」することができるのだ。この22年間、当局が毎年必ず行う慣例だ。

しかし、5月下旬、六四事件記念日前のこの最も「敏感な時期」に、中国各地で当局が予測しなかった火が起こっている。

爆発月?10日間で6件の爆発事故

5月28日、土曜日夜。山東省シ博市のある化学工場で爆発事故が起きた。原因は不明だが、翌朝報道された時点で、3人が死亡、8人が負傷したことが確認された。

「今日2件目だね。毎日爆発事故ばっかり…今月は爆発月?」と、このニュースに

対するネットユーザーのコメント。同日朝、四川省の省都・成都市の中心地にあるバス修理工場でも爆発事故が発生した。政府系のメディアによると、爆発は事務室内で起き、複数の従業員が負傷し、管理者一人が死亡したという。事故原因は不明だが、工場側は事故による可能性を否定している。

人為的な事件の可能性もあることや、爆発が起きた場所が省政府と市政府から非常に近いことから、注目が集まった。同事件について、各ポータルサイトがすぐにトップ扱いで報道したが、同日午後、政府系以外の関連記事やネットユーザーのコメントに対して削除作業が行われていた。

5月下旬以来、政府が報道しただけでも6件の爆発事故が発生した。ネットユーザーのコメントや書き込みサイトからの情報によると、ほかにも浙江省などで爆発事故が起きているが、報道されていないようだ。

土地強制立ち退きによる政府への不満 江西省連続爆発事件 

爆発事故への世論の関心や政府の緊張を引き起こしたのは、26日に中南部の江西省のある中小都市・撫州市で起きた連続爆発事件。地元政府の3つの部門で連続して起きたこの事件は人為的なもので、2人の死者、6人の負傷者を出した。事件を起こした容疑者・銭明奇(52)も死亡した。原因は、強制立ち退きなどで当局の対応に怨恨を持っていたという。

中国内陸部のこの小さな都市で起きた事件は、中国メディアのみならず、海外各国のメディアの注目の的となった。ジャスミン革命の影響や最近の一連のストライキに、中国当局は神経を尖かせている。そして相次いで摘発されている有毒食品問題により、民衆の当局への不満はすでに我慢の限界に来ているようだ。そうした中で起きたこの当局への復讐事件は、対立感情が高まっている中国の官民関係に大きな影響を与える事件として国際的に注目される事件となったのだ。

世界第2の経済体に躍進した中国では、そのGDPを押し上げている主要な要素の一つは、各地で行われている大規模な土地開発。そして土地収用に当たって、土地の私有権が保証されていないため使用権や保障金問題を巡って深刻なトラブルが起きており、それによって毎年数万件の群衆事件も発生している。権力者と開発者が結束して土地の使用者や居住者に強制立ち退きを求める事件もしばしば起きている。それに反発した住民が政府に対して陳情したり、焼身自殺を図るなど対立は激化する一方である。これまでのそうした住民の抗争とは違って、銭明奇は今回、暴力手段を用いて政府に復讐した。

銭は撫州市の地元住民で、店を経営していた。インターネットをよく使っており、ミニブログ(中国のツイッター)も持っている。爆発事件を起こす前、ミニブログで自身が当局から強制立ち退きと不当な保障金差し押さえを受け、そのため、10年間も陳情し続けたことを明らかにした。

また、ミニブログで、強制立ち退きにおける政府幹部の腐敗を長年訴えたことで昨年末に殺害されたとみられる浙江省の農村幹部・銭雲会さんのことに言及して、「銭雲会になりたくない」、「董存瑞になる」(董存瑞とは中国当局が建国の英雄として宣伝する人物。1948年5月25日、共産党軍の兵士として国民党軍と河北省隆化県での戦闘中、自分を犠牲にしてトーチカを爆破)と漏らし、自分を犠牲にして腐敗の当局と闘う決意を暗示した。

そして5月8日のミニブログで、2年前に遼寧省瀋陽市で、無許可露店の乱暴な取り締まりのため、「城管」と呼ばれる都市管理の保安要員を殺した店主・夏俊峰の行為に賛同し、「行動こそ問題解決につながり、闘いこそ救いを迎える」という最後のメッセージを残した。

このような「テロ」行為を取った彼に、中国の大衆メディアや、ネットユーザーらは意外にも同情を送っている。その中で、「銭明奇は新時代を開いた。歴史に彼(の偉大さ)が永遠に刻まれている」など、彼を英雄視している人も多くいる。そして一般民衆を暴力的な手段で当局に反発するようになるまで追い詰めた中国の現実に、憂慮や憤慨する声も多く見受けられる。

そんな中、28日夜、遼寧省瀋陽市蘇家屯区公安局のある警察責任者が襲撃されて死亡した情報も、29日に伝えられている。

当局、四面楚歌の危機

北京市在住の人権弁護士・劉晓原氏は撫州市の連続爆発事件について、ネット上で「合理的な暴力」との観点を示している。VOA中国語サイトの取材で、「彼と爆発事件で被害を受けた人たちはみな、強制立ち退きと司法の不公正の犠牲者である」とコメントした。劉氏によると、近年、焼身自殺で強制立ち退きに抗議する事件が多く見られるが、今回の爆発事件のように、住民の抗議行為は自殺から当局に対する「テロ攻撃」にまで発展した。「当局にとって極めて危険な信号だ。安定維持のために民衆の権利を奪い、圧制すればするほど、当局は四面楚歌の危機に陥ってしまう」という。

当局の四面楚歌の局面は、連続爆発事件だけに止まらない。翌日の27日

5月27日、江蘇省無錫市のある町で、ゴミ焼却発電所による環境汚染に反対する住民と警察との間で大規模な衝突が起きた。写真は抗議する村民。

、江蘇省無錫市のある町で、ゴミ焼却発電所による環境汚染に反対する住民と警察との間で大規模な衝突が起きた。事件は一部の村民が負傷し、連行されて抑えられたが、住民らはこの発電工場を支持する政府に対して「最後まで戦っていく」意向を示している。

そして、5月24日、中国内モンゴル自治区シリンホト(锡林浩特 )市の庁舎前で、2000人以上のモンゴル族学生による抗議事件が起きた。これは、最近20年間で内モンゴルで起きた最大の抗議事件で、石炭採掘による環境破壊に反対していた遊牧民がトラックにはねられ死亡したことに対する抗議行動であった。

海外各社の報道によると、民族問題や六四時期に警戒する中国当局は、27日から内モンゴル自治区の省都・フフホト市を閉鎖した。また、民族問題も絡んでいるため、さらなる大きな抗議に発展する可能性もある。海外のモンゴル人権団体によると、内モンゴル自治区のモンゴル人が30日にも大規模な抗議を計画している。隣国のモンゴルでも同日、首都のウランバートルで応援デモが行われる予定だという。

(趙莫迦)
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