4月の工業生産高に影 中国の電力不足、経済成長を鈍らせる

【大紀元日本5月27日】中国では、石炭価格の上昇と電力卸価格の据え置きのはざまに置かれる発電会社が、次々に発電機の稼働を停止させている。それによって起こった深刻な電力不足が、工場の生産を直撃しており、中国の経済成長の勢いにも影を落としている。

24日の中国網によると、中国最大の送電会社・国家電網の帥軍慶・副総裁はこのほど、今年の電力不足は史上もっとも深刻だった2004年を上回ると予測した。「電力用石炭の供給が改善されない場合、夏場の電力不足はさらに深刻になり、(管轄区内の26の行政区で)不足は4000万キロワットに上る恐れがある」。現在、華東と華中の一部の省ではすでに、工業企業への電力使用制限を実施しており、「夏場ピーク時には、その範囲はさらに拡大するだろう」と帥氏は懸念している。

一方、火力発電会社は発電用石炭のコスト上昇を負担できず、減産せざるを得ない状況に追い込まれている。中国の5つの火力発電会社の1つ、中国電力投資グループの幹部は、「石炭の価格が上昇するなか、電力の卸価格が引き上げられなければ、全国436カ所ある発電所のうち、5分の1は倒産の危機に陥る」と警告した。

ローレンス・バークレー国立研究所の中国エネルギー研究室に務めるデビット・フライドレイ副主任は米VOAに、中国政府はインフレが原因で、電気料金の大幅値上げに踏み切れずにいる、との見解を示した。「中国では、食品の2桁のインフレ率をはじめ、高いインフレ水準が続いている。そんな中、電力価格を引き上げるとコアインフレ率に響くことは必至だ」という。

電力網からの電力不足が原因で、多くの製造業はいま、ディーゼル発電に切り替えている。フライドレイ氏は、ディーゼル発電で企業の運営は維持できるが、生産コストは大幅に上がることになると指摘。「電力網からの電力を使用する場合、1キロワット時当たり8セント(約6.5円)となるが、ディーゼル発電の場合は、その値は6倍の45~50セント(約36円~40円)に上がる」

ニューヨークタイムズは、中国がエネルギーの分野で実施している政府のコントロール(電気料金)と市場原理(石炭価格)の融合は、経済成長にとってむしろ障碍となっていると指摘した。今年4月の中国の工業生産高は前年度比13.4%増加したが、3月の増加率の14.8%と比べ、上昇に鈍りをみせている。

一方、国内メディア・財新網は、今年の電力不足を引き起こした原因は石炭価格上昇のほか、昨年エネルギー高消費企業に課された省エネ目標が今年に入って反動を起こし、電力の大量消費をもたらしたと分析した。

中国政府は新しい5カ年計画で再生可能資源への投資を増やしている。しかし現在は、73%の発電は依然として石炭による火力発電に頼っており、水力発電は22%に止まっている。石炭価格と電力価格のバランスが経済成長に大きく響く状況は今後も続くと予測される。

(翻訳編集・張凛音)
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